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NEWSLETTER of The Japanese Society for Applied Animal Behaviour, No.52, May 2018

◇巻頭言

 


山田明央(会長・農研機構東北農研)

 
 実はペットロスでかなりまいっています。雄ネコで、トムといいます。少し前からだんだんい衰弱してきてはいたのですが、ちょうど1週間前(4月15日)朝、意識がなくなって、夜には死んでしまいました。推定12歳ぐらいで、家ネコとしては少し早かったかなと思います。正直言って、単身赴任で最期に一緒にいてあげられなかったからでしょうか、逝ってしまったっていう事実を心の中で整理することにかなり手こずっています。彼は知り合いの農家さんの牛舎ネコの子供として栃木県の西那須野に生まれ、生後数ヶ月で我が家にやってきました。それから私の異動と共に2歳過ぎに熊本に移って、最初はアパート住まい、その後、今の家に移って、ほぼほぼ家ネコとして過ごしていました。職業柄、実験動物も家畜も飼ってきましたし、その中で、動物の死には数多く立ち会ってきましたし、自分で手を下した命もありました。今、こんな気持ちでいるなんて、自分でも想像が付きませんでした。

 打越綾子先生の編集された「人と動物の関係を考える 仕切られた動物観を超えて(ナカニシヤ出版)」を佐藤衆介先生からいただいて読んだばかりですので、私という一人の人間の中にさえ「実験動物」と「家畜」と「トム(ペットとくくれないで固有名詞になってしまいます。)」と、それぞれ異なった動物観、生命観があることについて、改めて気づかされました。打越先生は、「動物たちの命に向き合い、そして動物への配慮ある社会を実現してゆくためには、まずは、私たちの視野を広げて、人と動物の関係がどれだけ多岐にわたるか知識や想像力を持つ必要があります。そのうえで、人間同士が互いの立場を理解し、丁寧に話し合う必要があると思います。」と述べられています。多様な立場の学会員から構成される応用動物行動学会として、さらに家畜管理学会と合同した新たな学会になっても、今後とも向き合って行かなければならない言葉だと考えます。非常に個人的な事柄から、巻頭言を書き始めて申し訳ありませんでした。

 さて、3月に開催された家畜管理学会・応用動物行動学会の評議員会・総会において、両学会の合同のおおよそについて、皆様に承認いただいたと考えています。引き続き、合同委員会の皆様には、残された細部の詰めをよろしくお願いいたしますとともに、来年の学会の際には、新しい姿・体制でのスタートが切れますよう、皆様のいっそうのご協力をよろしくお願いいたします。



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◇2018年度春季研究発表会の報告

 

新宮裕子(大会担当・根釧農業試験場)
八代田真人(庶務・岐阜大学)


 
 2018年3月30日、東京大学農学部において研究発表会を開催し、口頭20題、ポスター25題の発表がありました。短い時間のなかで、若手研究者を中心に自由で活発な討論が行われました。大会参加者の皆様には、ポスター会場の撤収および研究会の円滑な進行に協力していただき、何事もなく研究会を開催できたことに感謝いたします。

今年は優秀発表表彰の対象を変更し、口頭発表の学生会員を対象といたしました。10題のエントリーがあり、厳正なる審査の結果、以下の1名の方を優秀発表者として決定いたしました。おめでとうございます。

中山 侑さん(京農工大連合農)
「飼育下のオオアリクイにおける活動特徴」

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◇総会報告

 

出口善隆(副会長・岩手大学)


 
 2018年度日本家畜管理学会・応用動物行動学会合同総会が、2018年 3 月 31日に東京大学で開催されました。総会資料は2018年3月22日メール配信のものを参考にして下さい。

議事
1)2017年度活動報告
 提案通り、承認されました。

2)日本家畜管理学会・応用動物行動学会の統合について
統合委員会 安江委員長より以下の説明があった。
「統合に向けた現在までの進捗状況と提案事項」
①財務状況の基本的考え方
「財務に関する基本的な考えとして、両学会の現有資産は全て新学会に引き継ぐものとし、基本的には新設する懸賞制度や現地検討・課題研修会(仮称)の事業費に充てる。従来から実施してきた会誌の発行等の恒常的運営部分については基本的に単年度会費をもって充てる。なお、②については基本的に業務の簡素化・効率化を図ることによって達成するものとするが、軽労化のために業務繁忙期の短期事務補助経費も見込めるようにする。」

②会報の在り方
「会報印刷・発送費の低減、会員区分の多層化(つまりそれによる業務の煩雑化)を防ぐために、ABM誌は講演要旨の掲載される号のみ全会員に印刷発送し、他の3冊分については冊子体の印刷配布は行わない」

③会員数の確保(と目的外入会者の制限)
「若手の懸賞制度の充実と現地(現場)検討会(仮称)の開催により学会の魅力度を高めると同時に、「動物の行動と管理、ならびにその福祉性に関する学術研究を振興し、情報交換を通じて、研究成果ならびに技術、知識の普及を図る」という学会の目的以外の入会者を少しでも制限するために、新規入会者は学会員1名(一般会員)からの推薦を得ることとする。」

④大会・シンポジウムの在り方
経過を報告。

⑤夏の学校と現地検討・課題研修会(仮称)
「夏の学校以外に管理学会時代からの踏襲である「現地検討会」や種々の認証・確認のための「研修会」を設ける。開催は2年に一度くらいのペースとして,担当委員もしくはオーガナイザー方式として計画することにより,畜産関係だけでなく,動物園や野生動物も対象とした現場での勉強会や、研修会を実施する。」

⑥国際会議(具体的にはISAE)との関係
(1) 応用動物行動学会で従来から設けていた国際連携担当幹事は主にISAE開催に対する窓口であったことから専門の担当幹事を常置するのではなく、今後はISAE以外の国際学会も含めその都度準備委員会(誘致委員会?)の代表者が窓口となってその対応を検討する。
(2) 応用動物行動学会には特別予算としてISAE派遣助成基金があるが、こちらはもともとがISAE2015の残金であることから、基金の趣旨にのっとり従来通りとする(運用上の変更はあり得る)。

⑦会員区分と会費
 前々日開催された統合委員会で案が集約されたとして、
「若手の懸賞制度の充実と現地検討会・課題研修会(仮称)の実施等、より魅力的な学会へのリニューアル、さらに専門誌のオンラインジャーナル化により自身の情報発信力を強化できる体制を持続的に継続していくためには、会員の会費による運営が不可欠である。そのために本会の会員は、一般会員、法人会員とする。一般会員は、本会の目的に賛同し、本会が対象とする学術領域またはそれと関連ある領域において、専門の学識・技術または経験を有する者とし、会費は年4,000円とする。法人会員は、本会の目的に賛同し、本会の事業を後援する法人又は団体とし、会費は年12,000円とする。なお、会費徴収業務の煩雑化に関しては、年度会計内での外注化を検討する。」

⑧組織(体制)の在り方
 経過を報告。
 「統合に向けた現在までの進捗状況と提案事項」について、⑥国際会議(具体的にはISAE)との関係について、国際会議連携担当を設置することに修正し、提案事項を基本方針とすること、会則(案)の骨子について、承認された。

これを受け、安江委員長より下記3点の提案があり、承認された。
・会則(案)について、正規の総会での決定では1年後となり、統合の時期がさらに遅れるため、今後、文言等の検討を行い作成した会則(案)を、臨時総会としてメール会議で決定すること。
・議論継続のため統合委員会の任期を1年延長すること。
・統合学会会則(案)決定後、次期役員予定者を決定し、引き継ぎ(統合準備作業)を行うこと。

3)2018年度事業計画(案)
 日本家畜管理学会2018(平成30)年度収支予算書(案)について、
 「収入の部」の「前年度繰越金」を2,476,024円に、「支出の部」の「予備費」を1,849,724円に修正した(案)が提案され、修正も含め承認された。

4)その他
 なし

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◇応用動物行動学会・家畜管理学会シンポジウム報告
 

堂山宗一郎(シンポジウム担当 農研機構西日本農研)


 
「原点は家畜管理学〜応用動物行動学・動物管理学の始まりを知る〜」と題したシンポジウムを、2018年3月31日に東京大学にて開催いたしました。研究発表会および懇親会の翌日の午前中にもかかわらず、多くの方がご参加くださいました。

応用動物行動学会と家畜管理学会は、来年度を目処に統合する動きがあります。また、両学会とも若い学生会員も多く、近年は動物園の飼育員の方も多く入会しており、活発な研究発表や議論が行われています。このような状況であるからこそ、自分たちがなぜ動物行動学や動物管理学を研究しているのか?行動学と管理学の関係性とは?そもそも家畜管理学・動物管理学とはどういうものなのか?という様なことを再認識する絶好の機会であると考え、シンポジウムを開催いたしました。

今回のシンポジウムの演者を選出するにあたり、両学会を最初期から知り尽くす大御所の先生に話していただこうと思い、田中先生と近藤先生から下記の講演をいただきました。
1.「家畜管理学、家畜行動学、そして応用動物行動学」 麻布大学 田中智夫先生
2.「家畜行動学・家畜管理学・家畜生産システム 予はいかにして家畜行動学徒・家畜管理学徒になりしか・・・?」 北海道大学 近藤誠司先生

田中先生からは、日本における家畜管理学・家畜行動学の先駆者である三村耕先生の考えや家畜管理学会と応用動物行動学会の設立時の状況を中心にお話しいただきました。近藤先生からは、ご自身のこれまでの研究史を中心に管理学やウェルフェアに対する考え方の説明をしていただきました。質疑および総合討論では、行動生態学や行動の進化的側面を本学会でどの様に取り入れていくか、アニマルウェルフェアにおけるfor Animalとfor Peopleの妥協点の見出し方といった新学会でも議論を続けていくべき内容から、学生が新しい研究テーマを提示してきた時の対応といった教育的な内容まで、幅広い質問と議論が行われました。私個人としては、以前の研究発表会では現在の発表形式よりも発表と質疑の時間をかなり長く取っていたことを知ることができたため、今後の研究発表会でもこの様な形式を復活させても良いのではないかと感じました。
講演内容の詳細はAnimal Behaviour and Management に報告予定です。
 
最後に、本シンポジウムの司会進行を見事に務めていただきました東海大の伊藤先生と、シンポジウム当日に発表用PCが壊れて焦っている私にPCを貸してくださった西日本農研の江口先生に、この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。

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◇応用動物行動学会・日本家畜管理学会 共催シンポジウムに参加して
 

須藤由貴(酪農学園大学4年)

 
 2018年3月31日に東京大学農学部において行われた、応用動物行動学会と日本家畜管理学会の共催シンポジウムに参加させていただきました。麻布大学の田中智夫先生、北海道大学の近藤誠司先生が「原点は家畜管理学~応用動物行動学・動物管理学の始まりを知る~」というテーマで講演してくださいました。

 はじめに田中先生は「家畜管理、家畜行動、そして応用動物行動学」という題で行動学、管理学それぞれの学問の関係性を学会の発展とともに講演してくださいました。家畜管理は生物学的側面と工学的側面を持っており、生産を効率的に行うためには家畜と人間の生産性をうまく組み立てる必要があると話されました。家畜というのは野生動物と同一視はできません。そこから家畜特有の管理についての研究が必要とされ、1964年に「家畜管理研究会」が発足し、その後「応用家畜行動学会」と共催した発表会となりました。学会が拡大していくにつれ、過去には無かった動物園動物や、野生動物に関する発表が増えてきたことが良く判りました。

 近藤誠司先生は「Applied Animal Ethology, Animal Management And Animal Production」という演題で、御自身のこれまでの取り組みの紹介を中心に講演してくださいました。牛の行動観察、馬の行動観察など、先生の様々な研究内容に興味がわきました。先生はあらゆる場所で様々な家畜を観察し、そこでは常に好奇心や探究心を持ち研究を重ねてこられたことが良く判りました。そして家畜の管理をするには、様々な学問が関連し合っていて、それらの活用が重要だと感じました。

 お二方の話から私は、「畜産学の位置づけ」や「研究するということ」を個人的に学びました。今回私は人生で初めての学会参加でした。全てが学びの要素でこの中から何を私は持ち帰れるか考えていました。まだ自分の研究が始まってもいない段階で、戸惑っておりました。しかし、自分の研究分野である「家畜管理・行動学」の歴史と位置づけ、他学問との関連性を学び、自分の研究の目指す位置を感じることができました。今までぼんやりと興味を持つだけの研究内容がより有意義な物に感じるようになりました。

 そしてもう一つ「研究するということ」についてです。初めて話す参加者の皆さんは、まず研究内容を聞いてきます。研究をする人にとって名刺のような物であり、自分も早く欲しいと思いました。学会とは自分の研究を表現し、戦い、常に謙虚に学ぶ場所だということを知りました。この活動の繰り返しが学問、そして研究を発展させるのだなと感じました。

 そして家畜、野生動物、動物園動物、実験動物、使役動物と一括りに「動物」と言えず、それぞれの分野に分ける必要があります。しかし必ずどこかで共通点があって、互いに新たな発見をさせて貰えることにおもしろさを感じさせられた学会でした。今回たくさんの方々とお話をさせていただき、そこでたくさんのことを学びました。そして自分の勉強、研究に対するモチベーションが上がりました。今回の学びを今後の勉強と卒論の研究に生かしていきたいと思います。このようなすばらしい学会に参加させていただき誠にありがとうございました。


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◇書籍紹介
サラブレッドに「心」はあるか
著者:楠瀬 良(元 日本中央競馬会競走馬総合研究所・現 日本装削蹄協会特別参与)
 

青山真人(宇都宮大学)

 
 若手研究者、特に、産業動物以外を対象とする諸氏には、著者の楠瀬良先生のことをあまりご存知ない方もおられるかと思いますので、簡単に楠瀬先生の紹介をさせて頂きます。楠瀬先生は、先日、東京大学で開催されたシンポジウムでお話しを頂いた近藤誠司先生、田中智夫先生、また、近藤先生のお話しの中に度々?登場された佐藤衆介先生とともに、我が国における「家畜の行動学」の創始者の一人です。今はもう定年退職されていますが、日本中央競馬会競走馬総合研究所(JRA総研)に長年勤められ、ウマの行動学、特に、競走馬の心理や気質、今で言う「ウェルフェア」を重要視した研究をされていました。ウマ、特にサラブレッドの行動について、当時としては独自の視点、独自の手法で解析され、また、学会等でその研究成果を独特の「楠瀬節」(くすのせぶし)で発表されておりました。当時の私は、楠瀬先生の研究成果を学会やシンポジウムで拝聴し、微妙にウケて微妙にスベる「楠瀬節」が好きでした。

 私がこの本を読み進めてまず思ったことは、「楠瀬節、未だ健在!」ということです。この本は、某競馬雑誌に連載されていた記事をまとめなおしたものであり、一般の競馬ファンからの様々な疑問に、楠瀬先生が回答するという形式で書かれています。一般人向けなので、あまり専門的でなく、読み易いように書かれています。研究の話しも多く出てきますが、詳しいデータなどはあまり掲載されていません。しかし、楠瀬先生ご自身、あるいは他のウマの研究者の成果が分かり易く簡潔に紹介されており、我々行動学の専門家(?)にとっても、興味深い事例が多く掲載されています。詳しい内容については実際に本書を手に取って読んで頂くとして、本書に掲載されている、動物行動学を専門とする研究者にとっても興味深い事例を幾つか紹介させて頂くと、「気質は遺伝するか?」「条件付け学習」「社会行動」「母子行動」「雌雄差」「競走馬の輸送の仕方」「レース直前のパドックや返し馬での出走馬の様子とレースの成績の関係」など、です。動物行動学を専門とする多くの研究者にとっては、興味深いとは言え現象としては周知の事実のことも多く、本当の意味での目新しさは少ないかも知れませんが、「動物行動学あるある」ネタとしてはおもしろいかと思います。また、私自身もそうであったように、本書で初めて知った事柄もあり、新たな勉強にもなるかと思います。

 本書の最後には、楠瀬先生とJRAの武豊騎手との対談が掲載されています。これは、20年前の楠瀬先生の著書「サラブレッドはゴール板を知っているか」(1998年、平凡社)に掲載された対談の再録です(ちなみにこの書籍紹介の冒頭の「人物画」は、私が20年前にこの本に頂いたサインと楠瀬先生ご自身による自画像です。青山がモデルではありません)。一つだけ本書『サラブレッドに「心」はあるか』に苦言を言わせて頂くと、武騎手だけでなく、前著「サラブレッドはゴール板を・・」に掲載されている、岡部幸雄騎手との対談も本書に再録して欲しかったです。本書にも紹介されておりますが、「サラブレッドは、ゴール板を認識しているかどうか?」への見解は、武騎手と岡部騎手で異なっていました。私自身そうでしたが、前著「サラブレッドはゴール板を・・」を読んだ知り合いの競馬好きな方も、「実力も経験もある二人の偉大な騎手の意見が食い違う」ということがやはり一番印象に残ったようでした。武騎手と岡部騎手の意見が異なることは本書の中でも紹介されているので、きっと、岡部騎手との対談も読みたい、と思う読者も多いはずです(もしかして、「サラブレッドはゴール板を・・」も買わせようという楠瀬先生の策略・・?)。

 さて、これは本書とは何の関係もない、100%青山の私ごとですが、せっかくの機会、25年前の私の経験を紹介させて頂きます。「サラブレッドはゴール板を認識できていない」という見解の騎手がその根拠として挙げられた事例として、1993年のジャパンカップに出走したコタシャーンという外国の競走馬のことが紹介されています。コタシャーンの騎手は、実際のゴール板の直前にある何かをゴール板と勘違いし、馬に「レースが終わった」と伝えてしまったため、コタシャーンは減速し、二着になってしまったのです(このことは、本書の中でも少し紹介されています)。このときの一着はレガシーワールドという日本の馬で、当時の私の「押しウマ」でした。当時、私は実際に府中競馬場でこのレースを観戦しました。当然、レガシーワールドの単勝を含めた馬券を買っており、儲けたわけです。例えコタシャーンの騎手が勘違いをせずとも、レガシーワールドが一着になっていたと、今でも信じていますが、その勘違いのお陰で単勝が当たったかも知れないことを考えると、このエピソード、私にとっては感慨深い思い出です・・。

 最後に少し本書とは関係が薄い、青山の思い出話になってしまいましたが、本書の紹介は、ニュースレターではここまでとさせて頂きます。本書のもう少し詳しい紹介は、Animal Behaviour and Managementにおける書評としてあらためて掲載させて頂こうと思います。この本は、ちょっと気分転換の時間にも肩肘張らずに読め、しかも、それぞれの大学で「動物行動学」の講義を受け持っておられる先生方にとって、ちょっとした、しかし的を射たネタを仕入れるにも適した本かと思います。楠瀬先生のことをあまり知らない若手研究者にも、いや、特によく知らない研究者にこそ、手にとって欲しい一冊です。

発行年:2018年
価格:860円+税
発行所:中央公論新社
ISBN:978-4-12-150619-1

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◇書籍紹介
『人と動物の関係を考える』(ナカニシヤ出版、2018年)
打越綾子編、笠井憲雪・三浦慎悟・佐藤衆介・橋川央・遠山潤著
 

打越綾子(成城大学)


 昨今、人と動物の関係について、各方面で議論されることが増えてきました。犬や猫を家族の一員として終生飼養すること、農村地域における野生動物による被害に対処すること、牛や豚の飼育環境に配慮した消費行動を推進することなど、動物を基軸にした議論を耳にすることが増えました。

 ところが、人と動物との関係を考える際に、私たち多くの日本人は、愛玩動物、野生動物、動物園動物、実験動物、畜産動物等々、多種多様な位置づけを考慮しないまま、狭い視野で結論を出しがちです。犬や猫の適正飼養や殺処分問題に強い関心を持っている人々でも、動物病院で用いられる薬品を開発する際に用いられた実験動物や、ペットフードとして加工されている畜産動物に興味を持つことはほとんどありません。他方で、動物園の動物たちを見て、動物愛好家の方が「狭い檻で飼育されていて可哀想」などと発言することがありますが、限られた予算や過去の経緯に縛られながらも、精一杯愛情を込めて動物を飼育している人々からみれば、口ばかりの言動に聞こえることでしょう。

 このように、動物に関わる知識や技術について、私たちは自分の関心や専門の外の問題については単純化して考えてしまいがちです。こうした状況を、私は「仕切られた動物観」と呼んでいます。それぞれの動物に関わる人々は、「仕切られた動物観」の中で議論を組み立てており、この「仕切られた動物観」に基づいて、動物に関わる各種の法制度や価値観が作られているといって過言ではないでしょう。

 しかし近年、動物の権利論、動物福祉論、動物愛護論など、既存の仕切られた仕組みを超えて、動物への配慮を求める議論が高まりつつあります。そこで、各分野でどんなことが問題になっているか、どんな努力を重ねているか、互いに虚心坦懐に話を聞いて情報共有する場を設けたいと考えました。こうして開催されたのが、昨年3月に成城大学にて開催されたシンポジウム「人と動物の関係を考える」であり、本書は、このシンポジウムの講演内容を記録したものとなっています。講演録といっても、各先生が時間切れで語りきれなかった内容を補って文章にしていただきました。また、パネルディスカッションも時間不足で、フロアから集まった多数のご質問・ご意見を活かしきれなかったので、各先生に紙面で改めてお返事を頂くことにしました。

 周知の通り、笠井先生、三浦先生、佐藤先生は、それぞれの学会の重鎮ですし、橋川先生と遠山先生は、動物園および自治体の動物愛護管理行政の関係者から一目置かれる実務経験者です。5人の先生の手による第1章から第5章までの論文は、長年の経験に基づく深い洞察とともに、最新の情報や挑戦的な見解も披露する素晴らしい内容になっています。さらにパネルディスカッションの章では多数の論点が浮かび上がり、一定の仕切りの中では常識だと思っていた結論が、分野を超えれば異なる解釈になることが示されています。

 本書を通じて多くの方に訴えたいのは、動物への配慮のある社会を実現していくためには、私たちが視野を広げて、人と動物の関係がどれだけ多岐にわたるか知識や想像力を持つ必要があるということです。そして、動物への配慮と人間への配慮を同時に考えていく発想が必要であるというメッセージもお伝えしたいと思います。こうした結論がどのように紡ぎ出されたか、是非本書を手に取ってお目通しいただければと思います。

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◇編集後記とイベント情報
   

深澤 充(NL担当 東北大学)

 
新年度いかがお過ごしでしょうか?

 春の大会では皆様にお会いできて楽しかったです。多くの研究発表があり、懇親会にも多数ご参加いただきありがとうございました。2日目のシンポジウムもこれまでの家畜管理学会および応用動物行動学会の歩みを振り返り、統合をすすめていくためにも大変示唆に富んだお話だったと感じました。これから秋にかけて統合委員会で細部を詰めて、会員の皆様にお諮りすることなると思います。今後とも動物の福祉の向上とこの分野での研究の進展に向け、皆様からのご意見をお願いいたします。

 今回から開催情報が手に入ったイベントについて編集後記内で紹介することになりました。深澤の研究対象から畜産関係のみになっております。特に国際学会等、動物園動物や伴侶動物など、学会に関連する情報がございましたら深澤までお知らせ頂けますと幸いです。よろしくお願いいたします。

開催予定の動物の行動やウェルフェアに関連するイベントです。

WCAP2018 (世界畜産学会)
開催日:7/5-8
於:カナダ・バンクーバー
URL: https://www.asas.org/meetings/wcap-2018
要旨締め切りは過ぎておりますが、アニマルウェルフェアに関するセッションが設けられております。

AAAP2018 (アジア-オーストララシア畜産学会)
開催日:8/1-3
於:インドネシア・サラワク
要旨締め切り:6/15
URL:https://aaap2018.com/
アジア・太平洋州での畜産学会です。発表項目に“Animal Environment & Welfare”の項目が設けられています。おそらくAAAPでは初めてのことで、この地域でのウェルフェアの普及が進んできていることが伺われます。

UFAW meeting HK “Animal welfare across borders”
開催日:10/25-26
於:中国・香港
要旨締め切り:5/31
URL:https://www.cityu.edu.hk/cvmls/en/Events/NewsItems/2018/UFAW2018/index.asp
UFAW主催の会議です。文化や環境の違いおよび障壁を考慮しつつ地域(この場合アジアを指していると思います)におけるウェルフェアの取り組みを推進するのが目的です。NZやオーストラリアの研究者が中心に運営しているようです。

The summit
開催日:7/19-21
於:カナダ・カルガリー
要旨締め切り:5/19
URL:https://vet.ucalgary.ca/thesummit/
2年に一度開催される肉牛のウェルフェアに関する会議です。


伊藤秀一(HP・デザイン担当(& NL編集) 東海大学)

  2018年度もよろしくお願いします.

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ISAE2015 関連

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