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NEWSLETTER of The Japanese Society for Applied Animal Behaviour, No.50, Oct 2017

◇巻頭言

 


友永雅己(副会長(事務局長)・京都大学)


副会長をつとめております友永雅己です。

 この学会での副会長としての私の主たる役割は学会間連携でした。その成果が問われるイベントがこの晩夏に開催されました。そうです。日本動物行動関連学会・研究会合同大会「行動2017」です。行動学関連の諸学会が一同団結して合同大会を開催するのは2011年のAnimal2011以来です。今回も前回同様、英語名でかっこよくと考えたのですが、”Behavior2017”にすると、ちょうど同時期に英国で開催されていたInternational Ethological Conference (IEC)と2017 Summer Meeting of the Association for the Study of Animal Behaviour (ASAB)の合同大会である”Behaviour2017”とまるかぶりなので、「行動2017」と日本語表記にしました。英語では”KOUDOU2017”です。

 さて、私は、今回も6年前同様実は日本動物心理学会からの参加として準備委員会(幹事会と呼んでいました)にかかわっていました。応動行からは安定した実力を発揮する青山さんが会計担当でがんばってくれました。あと、加瀬さんも縦横無尽の活躍をされました。それから夏の学校担当で新村さんにもお手伝いいただきました。そのかいあって、今回は(今回も)私は、大所高所からエールを送るというモラルサポート全開の役目を賜り、旗振りに徹することができました。ただし、その代わり、日本動物心理学会員としての私は、いろいろな経緯を経て理事長という重責を担わされることになりましたが。

 個人的な感想を述べると、今回は、前回よりもはるかに楽しかった気がします。特に連日のシンポジウムがどれも素晴らしかった。2学会合同のやつでは、山梨さん、小倉さんの獅子奮迅の働きの結果、アメリカのインディアナポリス動物園からRob Shumakerをお招きするとともに、名著「動物園にできること」の著者である川端裕人さんのお話も聞くことができました。伊藤さんも本当にありがとうございました!また、最終日の「行動計測」のシンポでは、私だけでなく参加された皆さんも存分に楽しまれ、行動研究の新たな時代の幕開けを感じ取ることができたのではないでしょうか。この新時代を牽引する車輪の一つはこの応用動物行動学会です。日本の動物行動研究の中で、本学会がさらにその存在感を増し、発展に貢献すべく、努力してかなくてはと強く感じました。その次なる一手が学会統合であることは言うまでもありません。

 もちろん、ポスター発表の形式や会場のせまさなど、今後改善していく必要はあるかとは思いますが、この合同大会が、当学会員の夏場の主戦場になるべく発展していけるように努力していきたいと思います。皆様のさらなるご支援をよろしくお願いいたします。

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◇ISAE(国際応用動物行動学会)2017 参加報告

 

小針大助(茨城大学)


 2017年8月7日から10日の4日間、デンマーク王国第2の都市オーフスにて、第51回の国際応用動物行動学会(International Society of Applied Ethology)が開催されました。国内学会も含めて、ここ2年程学内業務のために学会参加ができていなかったこともあり、久しぶりの学会のエントリーはポスターでしたが、やや緊張しながらの学会参加でした。

 今回のメインテーマは「Understanding animal behaviour」ということで、近年の発表で多かったAnimal Welfare基準策定のための研究成果発表というよりも、原点に立ち返ったトピックが多く立てられており、「Maternal behaviour and neonatal behaviour」や「Social behaviour of animals」という懐かしい内容にちょっとうれしくなりました。一方で、Facial expression(評価は微妙だったけど)や動画解析系の先端的発表もなされるなど、新旧の入り混じった内容で、久しぶりに研究脳をフル稼働させることができて楽しかったです。

 ウッドガッシュメモリアルレクチャーは、地元オーフス大学のPeter Teglberg Madsen教授の鯨類のエコーロケーションに関する話題で、いくつかのハクジラの背中に特殊なセンサーを取り付けて実際のエコーロケーティングがどのように実施されているのかということを追跡した、今流行りのバイオロギング的な内容でした。近年急速に発達しているセンシング技術を利用することで、Applied Ethologyの分野でも十分応用ができるという提言もあり、今まで見えなかった動物の能力を捉えるという意味で、非常に興味深く聞きました。全体的な発表内容としては、お国柄か豚や採卵鶏、乳牛の発表が多く、肉牛の話題で発表した当方は、若干変わり種だったかもしれませんが、それでもエンリッチメントデバイスの効果を科学的に評価した発表として、幾人かに注目していただきました。しかし、全体的に思ったほど強烈なインパクトのある研究は少なく(N数が数十から数千単位という研究が沢山あってそういう意味での強烈なインパクトはありましたが)、ユニークさと研究的魅力から言って日本で実施されている応用動物行動学研究も、もっとアピールしていく必要があるなと感じました。一方で、今大会では、アジア、アフリカ、南米地区などからの多数の招待者がいたため、めずらしく国際色豊かな学会となっていました(いつもは西ヨーロッパが中心なので)。特に、中国や台湾の研究者と研究状況などについて話す機会があり、アジアリージョンでの交流の可能性についても話をできたのは大きな収穫だったかと思います。 

 日本との気温差15℃以上と物価の高さには閉口した今回の学会参加でしたが、久しぶりに多くの研究者と交流することもできたし、某先生とバイキングを堪能したりと、得るものはそれなりにあった気がしました。何より発表は学生によるものが多いので、意欲とチャンスがあるならば、日本の学生さんも在学中にできるだけ参加するといいなと感じました。



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◇ISAE2017に参加して

 

畠 彰吾(信州大学 学部4年)


 2017年8月7日から10日の4日間、デンマークのオーフスにて開催された51th Congress of the International Society for Applied Ethology(ISAE 2017)に参加しました。北海道よりも緯度が高いデンマークは8月でも気温は20℃前後と肌寒く、朝夕の冷え込みが信州の環境と似ていたことをよく覚えています。このISAE 2017は自分にとって初めての国際学会で、どんな話が聞けるのかワクワクしていました。学生の私が海外の研究を生で聴ける機会なんて滅多にありません。絶対何か掴んで帰ろうという気持ちで参加しました。

 私は講演プログラムの中から興味のある講演を選び出席しました。その中でも印象深かったものは、Cátia Correia-Caeiroさんによる「犬は幸せな時に笑うのか」という講演です。ペットとして犬を飼っている方は世界中に大勢います。どの犬も飼い主にとってはどの犬よりも可愛いとお思いでしょう。その中で、この犬は今嬉しいそうだと思うことはあってもその本心を確かめる術はなかったと思います。それを機械を使って科学的に証明しようとする様は、動物の感情の解明にアプローチしているようでとても夢のある研究だと感動しました。その他の講演でも鶏やクジラ、フェレットなどを使った研究の発表がありました。しかし、その研究の中で皆さんきっと1度は考えたことでしょう。「この動物は今何を考えているのだろう」と。人間ですら言葉無しに相手の感情を完全に読み取ることはほぼ不可能と言われています。この先、この分野の研究が進むことによって動物と人間との心の距離は縮まり、動物と人間とのより良い関係を築けるのではないかと期待しました。

 私は講演の他にWelcome receptionとConference dinner, Farewell receptionに出席しました。それらを通して様々な国の学者と研究はもちろん、世間話や趣味について語り合いました。学会のOfficial languageは英語だったため、聞こえてくる言葉の全てが英語で正直戸惑うこともありましたが、精一杯の気持ちと体で表現したところ、相手に好感を持たれ有意義な時間を過ごすことができました。あの場で国際的な交友関係を作れたことは私にとって非常に大きかったと思います。今回の学会では本当に多くの刺激を受けました。これからこういった外の世界に触れて自分の考え方や研究に活かしていきたいと思います。

 デンマークではほかにも様々なイベント、ハプニングがありましたがそれらを通して、一つ、人の温かさというものを知りました。行きの飛行機で隣の席になったスウェーデンからの留学生には機内食の説明をしてもらいました。迷子になった時、丁寧に地図を使って説明してくれる女性や財布が無くなった時、常に肩をたたいて励ましてくれたホテルのお姉さんがいました。帰りのバスで相席になったおばあさんはおにぎりとお水を恵んでくれましたが、僕も何かお返しがしたいとそのおばあさんに言うと、「お返しなんて求めてないよ。ただ、これからどこかで困っている人を見たらアンタが助けてあげなさい。」そう言われました。今回は、様々な方の温かさと優しさにふれて成功した旅です。ここでの経験を通して自分自身一回り大きくなったような気がします。人生は経験です。これからもいろんなことに臆することなくチャレンジして良い経験も悪い経験も自分の糧にしていきたいです。


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◇行動2017を企画・実行して思うこと

 

岡ノ谷一夫(東京大学)


(日本動物行動学会を代表して)

 本文が掲載されるのはニュースレターという比較的こじんまりした媒体であることに鑑み、せっかくだから正直な感想を述べることにしよう。この合同大会を企画運営するのはそれなりにたいへんだったし、幹事会が強力で、かつ有能な人々が補佐してくれたから(片岡さん、坂口先生ありがとうございます)可能になったことは確かだが、個別の学会を企画運営することに比べ「非常に大変」だったかというとそうでもないように思う。また、参加者として見れば、1つの学会に参加することで関連学会すべての情報が得られ、ほとんどの関係者に会えるのだから、これは効率が良い。

 国内の学会が多くの場合土曜日曜に開催される。これは若い子どものいる家族にとっては厳しいことである。私はこう見えて(どう見えてだ?)6歳と9歳の子どもがおり、土曜日曜はできれば家族と過ごしたい。今回の学会は水木金と、夏休みではあるが平日に行われた。うちの子どもたちはそれぞれ保育園・学童保育に行ってくれていたので、私も妻も、子どもの心配をせずに学会に参加できた。そして一度の学会で済んだので、その分土日が空いた。助かる。

 そういうわけで、私としては断然、合同学会推進派である。さらに言えば、今回参画した学会・研究会がすべて融合して、統合動物行動心理学会とでも言う名前のもとに団結してくれたらよいのになあと思う。ヨーロッパの伝統的な雑誌であったZeitschrift fuer TierpsychologieはEthologyと名前を変えたが、これはつまり、動物心理学と行動学が同じものを目指しているからである。

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◇行動2017を開催して

 

合同大会委員長/動物心理学会大会委員長 長谷川寿一

  「行動2017」(日本動物行動関連5学会・研究会合同大会)をお陰様で成功裏のうちに終えることが出来ました。参加者数は合計で633名を数え、前回の合同大会「Animal 2011」の参加者数を大きく上回ることができました。とりわけ、参加費無料ということもありますが、多くの学部生(114名以上)が参加してくれたことは、次世代の動物行動研究の育成という観点から、とても良かったと思います。参加者からの本大会へのレスポンスを、WEBアンケートという形で間髪を置かずに聞けることが出来たことも、次回の合同大会への引継ぎという意味で有意義でした。現時点での集計では、回答者の約9割の方が「参加してとても良かった/良かった」と回答してくださり、満足度の高さが表れています。顔合わせ会や懇親会も好評で、ほっと胸をなで下ろしているところです。しかし、具体的な記述を読むと、「シンポジウムのスケジュールがタイト」「質問時間がない」「ポスター会場が狭い」「会場案内が不十分」など多くの課題も浮き彫りになりました。アンケートでは、開催間隔はさておき、今後も合同大会を望む声が圧倒的多数でしたので、今大会の教訓を生かし、次回もぜひ活発な交流ができることを心から願っています。




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◇行動2017を開催して

 

菊水健史(麻布大学 )


 この度、行動2017(日本行動関連学会・研究会合同大会)の事務局長を担当しました。2011年の合同大会(慶應大学、合同大会長 渡辺茂先生)から6年が経過し、そろそろもう一度やりませんか、との声を周囲から聞くようになり、関係団体にお伺いをたててみた、というのが始まりです。その後、各学会から世話人の先生方をご推薦いただきました。これが素晴らしかった。合同大会長は、東京大学の長谷川寿一先生、誰もが知り、尊敬する行動学の第一人者である。動物心理学会からは友永雅己先生(総務担当、京都大学・霊長類研究所)、伊澤栄一先生(プログラム担当、慶応大学・文学部)、動物行動学会からは岡ノ谷一夫先生(会場担当、東京大学・総合文化研究科)、佐藤綾先生(協賛企業担当、群馬大学 教育学部)、応用動物行動学会からは青山真人先生(会計担当、宇都宮大学・農学部)、加瀬ちひろ先生(広報担当、千葉科学大学・危機管理学部)、そして行動神経内分泌研究会から菊水(とりまとめ、麻布大学・獣医学部)、という最強の布陣でした。内心、これで学会は成功したと確信していました。幹事会では数回の会議を経て、以下を決めました。まず、シンポジウム発表以外はすべてポスターにすること、シンポジウムは必ず学会をまたいだ企画にすること、公開シンポジウム、合同シンポジウムは各学会から1名ずつの参加で成り立たせること、共通言語は日本語、ポスターは各学会にわけるのではなくランダムにすること、初日も2日目も交流の場を設けること。これらは、すべて1つの目標、つまりこれだけ近い分野で研究しつつも普段はあまり交流を持つことがない分野間での、活発な交流の種をまくこと、でした。目的が決まれば、手段はおのずと見えてくる、というのはこのことでしょうか。お気づきの方もおられるかと思いますが、合同大会中は、すべての参加者が分かれることなく同じ場所(シンポジウム会場かポスター会場)にいることになっています。これで交流のための仕組みはできました。お陰様で、想像を超えるほどの交流や研究の楽しさが共有できたと思いました。その効果はアンケートの結果にも大きく反映さえれています。

 今後の行動研究はどこに向かうのでしょうか。それは時代(技術の発展、視点の多様化、分野間の交流)によっておのずと決まっていくのでしょう。1つの分野を突き詰めつつ(つまり自分の信じる研究の追及)は言うまでもないですが、実は視点を変えると様々な手法や理解の仕方、理解の仕方があります。それを積極的に取り入れ、さらに発展させることこそ、「科学」に立脚した行動学の発展につながることでしょう。

 私自身、学部時代から、いえそれよりはるか昔、幼少時代に野山を駆け巡り、動物と戯れていたころから、取りつかれた行動学研究。このような合同大会を経て、さらにその面白さ、興味が膨らみました。参加されたみなさんも同じお土産を持って会場を後にされたのなら、主催側としてはこれ以上にうれしいことはありません。またやりましょう、是非。

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◇行動2017に参加して

 

芦塚 玄(麻布大学 修士1年)

 8月30日から9月1日まで東京大学駒場キャンパスで開催された「行動2017」に参加してきました。今回の学会は応用動物行動学会、日本家畜管理学会、日本動物行動学会、日本動物心理学会、日本行動神経内分泌学研究会の合同学会であり、会場には多くの参加者の姿がありました。私はあまり大きな学会に参加したことがなく、今回の学会の規模にとても驚きました。

 ポスター会場には普段あまり触れないジャンルの発表が数多くありました。脊椎動物に限らず節足動物やイカ類などの発表も。事前に見に行くポスターをチェックしていたにもかかわらず思わず足が止まってしまうようなポスターばかりでした。また、発表者の方々とお話させていただく中でもさらに興味深い部分や自分の研究に応用できそうな話をうかがうことができました。ポスターの前でディスカッションになったときに色々な視点からの話が出てきたことは合同学会であることの意味の一つであったように感じられました。

 シンポジウムでは複数の学会によるコラボシンポジウムが行われました。今回の合同学会は「行動」という共通項を元に集まっていました。各学会が他の学会と研究内容で重なっている部分についてシンポジウムが行われました。様々な講演がありましたが、個人的に気になったのは応用動物行動学会・日本家畜管理学会×行動内分泌研究会のコラボシンポジウムでした。行動と内分泌はそれぞれの根拠を補完する形で用いられることがありますが、それぞれの専門家の講演を同時に聞く機会はなかなかないかと思います。今回のテーマは「緊張」と「安心」の行動学でありました。このテーマは動物福祉の研究においてよく扱われておりますが、学校飼育動物の福祉を研究している私にとっても参考になる内容でした。

 私は今回の合同学会のサテライト企画である夏の学校にも参加させていただきました。学会でのシンポジウムやポスターとはまた違い、同じテーブルに座りながら近い距離でディスカッションするとお互いの研究についてより深く相談することが出来て非常に有意義な時間でした。親しくなった他大学の方たちと研究の話やプライベートの話で盛り上がって朝までしゃべっていた時間は底抜けに楽しかったです。

 全体を通して、自分が詳しくない動物を知らない方法で調査している様々な研究などに触れることが出来、そのような研究に触れることで自らの研究に生かす部分や新しい興味などを発掘するきっかけになりました。ぜひともまたこのような形での学会に参加してみたいと思います。

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行動2017・夏の学校 開催報告

 

新村 毅(東京農工大学)

 2017年9月1・2日(金・土)に、行動2017サテライト企画として、「行動2017・夏の学校」と題した集いを、大会会場付近にある大橋会館(東京都目黒区)において開催しました。夏の学校は、学部生や大学院生などの若手研究者が一堂に会し、行動生物学を牽引する講師陣や同世代の仲間など、年齢や分野の垣根を超えて交流する合宿形式の研究会で、先端の研究を学ぶだけでなく、グループディスカッションを通じて研究の楽しさを発掘したり、行動生物学について語りあったりする場を提供することを目的としていました。講師は、山本真也氏(神戸大学)、鈴木俊貴氏(京都大学)、竹内秀明氏(岡山大学)、土畑重人氏(京都大学)、矢用健一氏(農研機構)という豪華講師陣を迎えることができ、事前参加申込は全国から43名の申込があり、大学院生を中心としつつも、学部1年生の参加も見られました。夏の学校では、講演以外にグループディスカッションを各日に1回ずつ、合計2回企画しました。約7名ずつのグループにわかれ、全参加者が自身の研究内容あるいは構想中の研究について説明し、それに対する質疑応答・議論をするというものです。19時から始まった1日目のグループディスカッションは、二次会が終了する24時まで続き、中には朝方まで議論を続けるグループもあったことが、この夏の学校の全てを物語っていたように思います。アンケートは、29名から回答を頂くことができたので、以下に、参加者からのアンケート結果と伴に、今回の夏の学校を、もう少しだけ詳しく振り返りたいと思います。

 講演者の先生方のトークは、まさに行動生物学を牽引するにふさわしい方々もので、夏の学校らしく若手へのメッセージも含まれた講演の評判は高く、全ての講演において白熱した質疑応答が見られました。グループディスカッションについては、5点満点中の平均点が4.2点と高い評価を得たと言えます。合宿形式についての質問は、69%が「合宿形式は良かった」と回答しており、31%が「特に形式にこだわりはない」と回答していました。グループディスカッションは、前述したように、議論が夜遅くまで続いていたことが全ての答えのように思います。世話人の狙いや想像を超え、実際には参加者全員が能動的かつ真摯的に議論に取り組み、勝手に盛り上がっていたように思えます。次に、参加費・宿泊費・懇親会費についてですが、37.9%の参加者が「適当」と回答したものの、55.2%が「少し高いと思う」と回答しました。学会からの補助を受けることができたものの、東京開催であることなどで費用が増えてしまったことは反省点で、今後は参加費にも満足してもらえるような場所・企画になるように努めたいと思います。アンケートの最後では、次回以降の開催について伺いました。その結果、1年後の開催の希望が44.8%であり、34.5%が合同大会と同じ時期と回答していました。「またあったら参加したいか?」という質問に対しては、「ぜひ参加したい」が55.2%、「参加したいが場所次第」が34.5%となりました。これらの結果から、多くの参加者が次も参加したいという意見を持っていると思います。以上のように、アンケート結果から、多くの参加者に夏の学校を楽しんでもらえたように思えます。大学や学会では味わうことのできない魅力を出すこともできたようにも思えます。講演者による情熱あるトークと、参加者による能動的なグループディスカッションが成功に導いてくれました。参加者全員に、心から御礼申し上げます。

 最後に、夏の学校では、多くの方々に御協力頂きました。撤収等にご協力頂いた方々、議長の方々、また、この企画や補助をご快諾頂いた行動2017大会長の長谷川先生、幹事の皆さま、各学会・研究会の皆様、さらには、参加を学生に呼び掛けて頂いた研究室PIの先生方、企画を成功に導いてくれた講演者と参加者の方々に、この場をお借りして感謝申し上げます。夏の学校を通じて、今後の行動生物学を担う若手が出てくることを、何よりも期待しています。


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◇行動2017・夏の学校に参加して

 

中嶋 紀覚(岐阜大学大学院 博士課程2年)

 2017年9月1日~9月2日に開催された「行動2017 夏の学校」に参加しました。参加者は講演者を含め43人で、学部生から研究員まで幅広く、様々な分野の方が参加していました。この会は講演とグループディスカッションで構成されていました。今回初めて参加しましたが、最も印象的だったのは、議論の活気と参加者のモチベーションの高さでした。私自身、以前は他分野の研究や民間企業での研究開発に従事していたため、これまで様々な分野の学会・講演会・シンポジウム等に参加してきました。分野によって雰囲気や規模感は様々ですが、これ程に活気があり、参加者のモチベーションが高い会に参加したことはありませんでした。

 まず講演に関してですが、対象生物は多岐にわたり、動物の社会性や行動選択に関して、今を輝く先生方のお話を聞くことができました。チンパンジーの行動選択やシジュウカラの鳴き声における文法規則、メダカの配偶者選択、アリの社会進化の研究や牛の生体センシング技術など、全ての講演は私にとって非常に興味深いものでした。質疑応答では時間をオーバーしてしまうことも多々あり、「時間がたりない」と感じてしまうほどでした。

 グループディスカッションでは6-7人で一つのグループになり、各自個人の研究内容や興味のある内容に関して議論を行いました。自分の研究と直接関連しない内容にも関わらず、どのグループも大盛り上がりで議論を行っていました。予定された時間を過ぎ、会場が使えなくなってもなお、外で議論するグループもあり、研究に対する皆さんの「熱さ」を実感しました。それと同時に、普段の研究者同士の議論の少なさを露呈しているのでは?とも感じました。

 どんな研究者であれ、自分の研究に関していろいろな方と議論したい!と感じている方は多いと思います。議論することで研究は洗練され、適正な方向に進んでいくのだと思います。私自身、民間企業の開発者だった時には、チームメンバーで毎日議論し、それにより適正な製品を効率的に開発するという流れがありました。しかし議論をするにあたっては、議論の進め方・メンバーのパワーバランス・雰囲気をコントロールすることが必要であり、それにより効率的かつ建設的な議論を進めることが可能になります。この会のように研究に対して議論する場がさらに増えることで、さらに熱く建設的かつ効率的な議論ができるのではないかと考えています。研究に対する議論の必要性を認識する良い機会にもなるため、今後もこの「”熱い”夏の学校」の積極的な開催を願っています。主催や参加者の皆様には心より感謝を申し上げます。

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◇WAFL参加報告

 

瀬尾哲也(帯広畜産大学)

 2017年9月5日から8日にオランダで開催されたInternational Conference on the Assessment of Animal Welfare at Farm and Group Levelに参加しました。この学会は1999年に発足した3年に一度行われるまだ新しい学会で本大会が7回目です。信州大学で行われた日本畜産学会と同じ日程で、しかもアニマルウェルフェアの公開シンポジウムもあるというのに、残念ながら一方しか参加できない日程になってしまいました。ワーゲニンゲン大学がホストとなり、大学からバスで20分程度のホテルで開催されました。本学会からの参加者は森田氏、新村氏、但氏でした。私自身はアニマルウェルフェアの評価法や認証制度について取り組んでおり、この学会が一番内容も近いので第3回から毎年参加しています。

 本学会は、アニマルウェルフェアの評価が毎回の大きなテーマでその関連発表も多いが、アニマルウェルフェアと持続性 (Sustainability)、社会におけるアニマルウェルフェア、アニマルウェルフェアにおける社会的ネットワーク、遺伝とアニマルウェルフェア、科学におけるバイアスというセッションなども加わりました。その中でも、持続性とアニマルウェルフェアの関係性もとらえる必要があるという提案が印象的でした。

 大会前日は ”Innovation Day”と銘打って、新しく開発されたデバイスや施設のプレゼンが行われ、どれが一番革新的であるかスマートホンから参加者が投票するという新企画がありました。その結果Q-Perchという鶏が止まり木に脚をかけることにより、外部寄生虫であるワクモを制御するものが選ばれ表彰されました。確かに革新的な技術であると感じました。

 ワークショップは5つのテーマが用意され、そのうちWQ(Welfare Quality)の最新と未来に参加しました。WQによる評価研究は今も数多く行われているが(本大会においても)、その問題点が評価法を試行した研究者から多く提案されました。たとえば最終スコアは必要であるのか、動物ベースだけでなく施設ベースも必要ではないか、評価結果の信頼性などでした。

 大会参加者が増え続けているので、今回から一部のセッションで2会場となり全部の講演を聴講することはできなくなりました。エクスカーションは大学農場、バンケットは動物園でしたが、私は参加しなかったので下記ホームページのスライドショーをご覧ください。

 次回大会は2020年にアイルランドかオーストラリアのどちらかになる予定と発表がありました。講演要旨集はホームページhttps://wafl2017.com/からダウンロード可能です。

 オランダではすでにアニマルウェルフェアの認証制度が始まっており、スーパーマーケットに行くとアニマルウェルフェアの認証ラベル、放牧ラベルが乳肉製品に表示されています。またオーガニックも一般的です。電車やバスからは牛、馬、羊の放牧風景はどこでもみることができますし(施設型畜産も進んでいるようですが)、家畜が飼育され無料で入場できる市民農園もあります。アニマルウェルフェアは消費者に身近なものであると感じました。

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◇第7回 WAFL国際会議参加感想

 

但 申 (オランダ・ワーゲニンゲン大学修士課程1年)

 初めまして、今年3月に北海道大学を卒業し、現在オランダのワーゲニンゲン大学(Wageningen University and Research Centre)動物科学修士課程に在籍している但 申と申します。私は9月5日から9月8日にかけて開催された第7回WAFL (the Assessment of Animal Welfare at Farm and Group Level)国際学会に参加しました。学業の都合上、学会の一部にしか参加できませんでしたが、学会で得られた体験をご紹介したいと思います。

 WAFLはアニマルウェルフェアの評価および応用に対する革新的な研究や取り組みについて共有する会議として、3年ごとに世界各地で開催されています。今年はちょうどワーゲニンゲン大学が主催で、会場もワーゲニンゲンの付近でしたので、これは見逃せないと(勝手ながら)思い、ちょうど5日が大学の新学期という非常に不運なタイミングのなかで、授業の合間を縫って参加しました。

 学会ではもっぱらアニマルウェルフェア(以降AWと略)に関する研究が幅広く取り上げられていましたが、そのなかで特に印象に残った事項を2点ほど簡潔に記します。まず、世界の多岐にわたる家畜生産形態にそれぞれ合わせた独自のAWのアプローチが取られていました。たとえばオランダではWelfare Quality®というAW評価のプロトコールが普及されているので、それを用いる前提での応用的な研究がありました。また放牧豚が飼育されている前提で、その放牧地における暑熱ストレスおよび日焼けの影響について研究したデンマークの研究者もいました(よほど暑かったのでしょうね。。。)。その一方で、世界で普遍的な家畜の舎飼システムにおけるAW問題を取り上げる研究も多数見受けられました。畜産のあり方も一つだけではない。欧州の多様性を容認し、それぞれに対して解決の糸口を探るスタイルには感心しました。

 第二に、農科大学であるワーゲニンゲン大学が主催するだけに、学会のなかで持続可能性(サステナビリティ―)が頻繁に議題として挙げられていたようです。AWは単一的な問題ではなく、AWをサステナビリティ―の一環と捉えることで、同時に環境面や経済面での問題にも必然的に取り組む必要があるという認識が広まっていました。「AWの改善を追求するのも良いし、ベジタリアンにもなるのもいい。それでもワーゲニンゲン大学はあくまで今後100年も200年も世界的に安定な食料生産を目指す。」のようなことを家畜生産システム研究室のImke de Boer教授が基調講演で話されていました。それは万人受けする考え方かもしれませんが、私個人としてそれに賛同するかどうかはまだ分かりません。今後授業でさんざん学ぶことになると思いますが。。。

 私はアニマルウェルフェアを専門として学ぶために海外の大学院に進学しました。渡蘭して早々WAFLで色んな研究にふれ、また自分の今後の研究のあり方について模索する機会が与えられたのは今後の学修のためにとても有意義でした。研究はまだまだ先の話ですが、将来はこのような学会で発表し、多様性あふれるアニマルウェルフェア研究のなかで自分のスタイルを打ち出すことを夢見て、今日も勉学に励んでいきます。


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◇2018年度春季研究発表会の開催予告

 

新宮裕子(大会担当・道総研根釧農試)

 以下の日程で応用動物行動学会・日本家畜管理学会合同の2018年度春季研究発表会とシンポジウムを開催します。詳細は次号に掲載しますが、30日に懇親会も予定しています。ふるってご参加ください。

日程:2018年3月30日(研究発表会・評議会)、31日(シンポジウム・総会)
場所:東京大学農学部(東京都文京区弥生)

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◇新刊図書「ライフステージでみる牛の管理」の紹介

 

中辻浩喜(酪農学園大学)

 本書発行までの道のりをさかのぼると,そのきっかけは「大動物臨床研究会」が行ってきた「牛の一生における管理」と題した一連のシンポジウムです。「大動物臨床研究会」は約40年前,本学教職員と本学卒業の大動物臨床獣医師によって設立された「酪農学園大学・大動物臨床研究会」が始まりです。その後門戸を広げ現名称に改名し,現在では全国各地500名を超える産業動物獣医師が集う全国最大規模の研究会となっています。

 この研究会の現会長が本書の監修者代表でもある髙橋俊彦先生であり,北海道NOSAIの現場獣医師から本学に赴任されて間もなく,先生から一連のシンポジウムでの話題を「臨床獣医」(緑書房)で連載したいとの相談が,本学の森田 茂先生ともに私にありました。その理由は,先生曰く「産業動物の獣医師にとって,『獣医学』はもちろんだが,現場で必要なのは『畜産学』である。しかしながら,多くの獣医師は畜産学をほとんど学ぶことなく大学を卒業する」(「監修を終えて」より原文のまま)ため,読者である実際に診療や農家指導を行う臨床獣医師に,牛について多角的な知識を身につけてもらいたいとのことであった。先生も「ずいぶんはっきり言うなあ~」と思いつつも,その実態と連載の意義は十分理解できたので,監修の一端を担うことを快諾したのを思い出します。

 この連載は,応用動物行動学会員を含む多くの先生方のご協力をいただきながら,2014年2月から,当初2年の予定が約3年となり,2017年2月まで続きました。長期間の連載を進めるうちに,これらの内容を一冊にまとめようと考えるのは当然の成り行きでしょう。こうして出来上がったのが,本書「ライフステージでみる牛の管理」(緑書房)です。

 牛は生涯の間に,新生子牛,哺育牛,育成牛のステージを経て,乳牛の場合は初産牛,泌乳牛,乾乳牛に,肉牛の場合は繁殖牛または肥育牛になり,その後,一生を終えます。当然ながら,ステージごとに適正とされる「牛の管理」があり,これに準じた管理を行うことが理想です。本書では,これら“ステージごとの”「牛の管理」のポイントについて,「栄養」,「行動」,「衛生」および「疾病」の4つの分野に分けてまとめています。

 その中で,筆者は「栄養管理」,森田先生は「行動管理」の一部執筆と監修を担当しました。栄養管理分野では,昨今の乳牛や肉牛の遺伝的改良による著しい高能力化に対応するため,これまで以上に考慮すべき栄養管理上のポイントを記述するよう努めました。また,行動管理分野では,家畜管理を行動との関係で見る場合に重要な「人と牛の関係」および「アニマルウェルフェア」の内容充実が図られています。

 連載の単行本化は大変うれしい話です。なぜなら、本書のように「牛の一生における管理」を全体的に網羅した書籍は多くないからです。そして,出来上がった本書をみると,獣医師のみならず,実際の現場での家畜飼養管理に従事される方自身や営農指導をされる方々の手引きとして、あるいは獣医・畜産学を学ぶ学生の参考書としても十分活用できると思います。是非、多方面でご活用いただければ幸いです。

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◇編集後記   

深澤 充(NL担当 東北大学)

 最初に他の学会からメッセージをお寄せいただきました先生方には御礼を申し上げます。

 この夏はデンマークでのISAE、東京での行動2017&夏の学校、オランダでのWAFLと応用動物行動学会に関連の深い学会大会が目白押しでした。アニマルウェルフェアに関係するところでは伊那の日本畜産学会大会や宮崎でのでのシンポジウムもありました。たくさんのインプットが皆様の研究に活かされ、次の学会でも興味深い研究が出てくることを楽しみにしております。

 次回1月号はは春の大会の告知が中心になります。お楽しみにー。



伊藤秀一(HP・デザイン担当 東海大学)

 

 私はニュースレターの担当ではありませんが,HP担当ということもあり,皆様からの原稿を受け取り,Web用に配置してアップロードする作業を行っています.しかし,Webの専門家ではないので,毎回半日近くかかってしまいまして,原稿が集まってからNLが発行されるのに少し時間をいただくことになってしまいます.申し訳ありません.

 この号で,ニュースレターが50号となりました.また,このニュースレターをWebに掲載する新しい形式にしてから約25回発行しています(途中の44号,45号は熊本地震によって私の大学が大きな被害を受けてしまいまして,簡易的なニュースレターとして発行させていただきました).NLの表紙は,適当で良いと思うのですが,単なる自己満足として雑誌調としてみました.写真も36号は応用動物行動学会フォトコンテストのグランプリ写真を使わせていただきましたが,それ以外は自分のストックからセレクトしています.これも大きな自己満足です.

 そろそろ作業を簡素化して,さらには見栄えも良くすることを考えています.多分,新しいWebデザインアプリを使えば,簡単にできるはず・・・・.なのですが,この歳になると新しいことを始めるのがめんどくさくなってきまして・・・・がんばります.


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