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NEWSLETTER of The Japanese Society for Applied Animal Behaviour, No.49, July 2017

◇巻頭言

 

出口善隆(副会長(事務局長)・岩手大学)

副会長を拝命いたしました岩手大学の出口です。今年度の応用動物行動学会における大きな事柄の1つは、6年ぶりとなる行動関連学術団体による合同大会の開催です。Animal2011(慶応義塾大学)の4学会(日本動物行動学会、日本動物心理学会、応用動物行動学会、日本家畜管理学会)に加えて日本行動神経内分泌学研究会も参加し、行動2017(Koudou2017)と題して、8月30日から9月1日まで東京大学駒場キャンパスで開催されます。接することの少ない異なる専門分野の研究成果にたくさん触れることのできる機会です。会員の皆様の積極的な参加をお願いいたします。


そして、もう1つは応用動物行動学会と日本家畜管理学会の統合に向けた動きかと思います。2015・2016年度にはじめての両学会共通学会長に安江会長が就任されました。今年度からは山田会長が共通学会長に就任されました。3月の総会では日本家畜管理学会・応用動物行動学会統合委員会の設置も承認され、様々な検討が始まっています。応用動物行動学会と日本家畜管理学会の力が統合され、よりパワーアップした新しい学会が誕生できるよう、学会員の皆様のご理解、ご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

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「行動2017」(五学会・研究会の合同大会)の案内

 

青山 真人(「行動2017」準備委員・宇都宮大学)


ニュースレターの第46号、47号、48号でも案内して来ましたとおり、8月30日~9月1日の間、東京大学駒場キャンパスにて、「行動2017」(日本動物心理学会、日本動物行動学会、日本家畜管理学会、応用動物行動学会、日本行動神経内分泌研究会の5学会・研究会の合同大会)が開催されます。6月30日で事前参加と発表申込みを締め切らせて頂きましたが、前回の合同大会「Animal 2011」を超える事前の参加申込み・発表申込みを頂いています。大会スタッフの特権?で、ざっと演題をみてみましたが、今から聴くのが楽しみなものが多くありました。2つの合同シンポジウムについても、演題が決まっています。



○公開シンポジウム「行動選択」

・いつ、誰を選ぶか
~グッピーにおけるメスの配偶者選択と隠れた選択~

(佐藤綾先生・群馬大学)


・ヒトと動物の空間情報獲得と行動選択

(澤幸祐先生・専修大学)


・精密化された酪農場における乳牛の行動選択と管理者の役割

(森田茂先生・酪農学園大学)


・動物はどのように異性を選択し異性に接近するのか

(千葉篤彦・上智大学)



○合同シンポジウム「行動計測」

・集団生活下のマウス個体識別と行動計測

(掛山正心先生・早稲田大学)


・類人猿と鳥類の心理研究:
最新センサー技術とアナログの工夫で新しい研究パラダイムをめざす

(狩野文浩先生・京都大学)


・動物の行動を捉える新たな目
~Let’s try 3D depth sensing for animal behaviour recording !!~

(小針大助先生・茨城大学)


・バイオロギングによる行動学
海洋動物の長距離ナビゲーション研究を例として

(依田憲先生・名古屋大学)




また、4つの、「2学会コラボシンポジウム」が予定されています。シンポジウムのタイトルと、担当学会だけを紹介しておきます。

・「緊張」と「安心」の行動学 
~動物たちは何をどのように「感じている」のか?~

(応用動物行動学会/日本家畜管理学会と行動神経内分泌研究会)


・性差と配偶者選択

(行動内分泌研究会と動物行動学会)


・動物園研究のこれからの10年を考える:福祉・科学・展示の調和を目指して

(日本動物心理学会と応用動物行動学会/日本家畜管理学会)


・脊椎動物の認知比較?魚もそれほどアホやない

(動物行動学会と日本動物心理学会)



詳細は、

http://darwin.c.u-tokyo.ac.jp/Behavior2017/

をご覧下さい。



 「信大の畜産学会に行くことにしてるからなぁ・・」あるいは、「オランダに行くし、合同大会はいいかな・・」という理由で、事前参加を見送られた会員の皆さま! もし8月末から9月はじめにかけて、お時間があるなら、(当日参加費は少し割高になってしまいますが)渋谷で一杯やる「ついで」のつもりで、動物行動学の他分野の研究成果を観られてはいかがでしょうか?

自然科学では、他の分野の研究者との「出会い」が、自分の研究テーマの重要なヒントになったという例が少なくありません。この会が、皆様の(特に僕の・・)研究のなんらかのヒントを見つけられることを、願っております。



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日本畜産学会第123回大会に合わせたシンポジウムのご案内

 

竹田謙一(信州大学)


今年は、応用動物行動学分野では様々な発表の場が用意されています。東京で8月に開催される行動2017、そして9月にオランダで開催されるアニマルウェルフェア評価に関する国際会議です。このような賑やかな研究活動がある中、9月6日、7日に信州大学伊那キャンパス(農学部)を会場に、日本畜産学会第123回大会が開催されます。会期中、様々なシンポジウムが企画されていますが、アニマルウェルフェアに関するシンポジウム、講演が予定されていますので、皆さまにご案内します。


1.一般公開シンポジウム「アニマルウェルフェアと畜産物の国際化」

畜産物の国際的な流通が盛んな今日、アニマルウェルフェアの視点から生産が行われているのか、また、それに従った第三者評価が求められています。我が国では、平成23年にアニマルウェルフェアに対応した家畜の飼養管理指針が畜産技術協会から公表されていますが、生産段階における普及はなかなか進んでいません。そこで本シンポジウムでは、アニマルウェルフェアに対する正しい理解を深めると同時に、畜産物の国際化に必要な各種、アニマルウェルフェア関係の認証について紹介します。また、アニマルウェルフェアを意識して家畜生産に取り組んでいる事例を紹介し、アニマルウェルフェアの普及に向けた課題等について整理します。予定されている演者は、以下のとおりです。

・「アニマルウェルフェアとは何か」

小針大助氏(茨城大学農学部准教授)


・「アニマルウェルフェアに関する国際認証 ~ISO、Global GAP等の違い~」

竹田謙一氏(信州大学農学部准教授)


・「アニマルウェルフェアの普及 ~消費者意識の醸成」

佐藤衆介氏(帝京科学大学生命環境学部教授)


・「ブロイラー生産におけるアニマルウェルフェアの取り組みと課題」

株式会社 十文字チキンカンパニー


・「酪農生産におけるアニマルウェルフェアの取り組みと課題」

演者打診中


・「養豚生産におけるアニマルウェルフェアの取り組みと課題」

株式会社 林牧場


開催日時:平成29年9月7日(木) 14:00~17:00
場  所:信州大学伊那キャンパス 農学部26番講義室
主  催:北信越畜産学会、(公社)畜産技術協会
共  催:(公社)日本畜産学会、信州大学農学部

夕方遅くまでの開催となりますので、ご聴講を希望される方は、会場周辺での宿泊をお勧めします。

宿泊に際しては、以下の手続きを踏んで頂くことで、大会実行委員会で押さえているホテルを予約できます。なお、大会実行委員会では、宿泊施設の予約業務を「東武トップツアーズ株式会社伊那支店」に委託しています。予約手続きができなかった方は、東武トップツアーズ(株)伊那支店(畜産学会担当:藤木)までご連絡ください(連絡先:TEL:0265-72-3103・FAX:0265-73-9546・E-mail:ina4@tobutoptours.co.jp、ご予約の際、日本畜産学会123回大会の関係で宿泊する旨をお伝えください)。

宿泊施設の予約手順


① 日本畜産学会第123回大会のWebサイトにアクセスする(http://jsas123.org/)。

② 大会ホームページ左側にあるメニュー欄にある「参加登録・宿泊」をクリックして、「参加登録・宿泊」のページを表示してください。参加登録・宿泊に関する注意事項をお読みいただき、[参加登録はこちら] ボタンをクリックして下さい。

③ 「はじめての申込はここをクリック」ボタンをクリックしていただき、「新規ユーザー登録」画面で基本情報を入力してください。

④ 基本情報入力後、「参加登録ページ」で氏名、所属、連絡先等の他、参加形態(本シンポジウムのみに参加される方は、「参加しない」を選択してください。ここでの選択内容は、日本畜産学会第123回大会への参加をお聞きしています)を入力してください。研究交流会の参加有無についても、日本畜産学会第123回大会の研究交流会への参加をお聞きしているものですので、本シンポジウムに参加される方は、ここでの選択は、「参加しない」をお選びください。

各種情報を入力した後、「確認」ボタンをクリックし、参加登録情報を確認してください。もう一度、ご確認ください。本シンポジウムのみに参加される場合であっても、この手続きを踏まないと、宿泊予約ができません。お手数をお掛けし、大変申し訳ございませんが、上記の手順に従って、以下の確認画面に進んだのち、画面左側のメニュー欄にある「宿泊」ボタンをクリックして、宿泊施設を予約してください。

➄ 登録内容に修正がある場合は、「✔ 修正」ボタンを押して、画面の指示に従い、記載事項を修正してください。

⑥ 複数人の宿泊予約をする際は、マイページの「同行参加者登録」に進まず、代表者の方の登録画面から、直接、宿泊予約のページで複数部屋をご予約ください。

2.公開シンポジウム
「畜産学の特性に配慮した教育・研究課題-飼育動物の安定的利活用を目指して」


上記のシンポジウムの翌日、9月8日の9:00より、標記シンポジウムを開催いたします。本シンポジウムは、畜産学教育に関連した内容になっておりますが、以下の演題のとおり、応用動物行動学会にも関連した内容も盛り込まれています。あわせて、ご聴講頂ければ幸いです。

・「家畜生産を支えるアニマルウェルフェアとスマート畜産」  
竹田謙一(信州大学農学部准教授)

・「畜産物の安全性の担保、特に放射能対策」
眞鍋昇(大阪国際大学教授・学長補佐、日本学術会議連携会員)

・「応用動物の機能と能力を生かす最近のゲノム編集技術と繁殖技術」
柏崎直己(麻布獣医学園理事長、日本学術会議特任連携会員)

・「養豚チェックオフ制度、とんとん自助金は何を目指すか」    
志澤 勝((一社)日本養豚協会会長)

開催日時:平成29年9月8日(金)  9:00~12:00
場  所:信州大学伊那キャンパス 農学部21番講義室
主  催:日本学術会議食料科学委員会畜産学分科会
共  催:(公社)日本畜産学会、日本畜産学アカデミー
後  援:信州大学農学部

今から16年前、伊那の地において、第24回家畜行動に関する小集会を開催いたしました。今の応用動物行動学会の母体組織であり、これを最後に小集会は応用動物行動学会へと発展的に解散となりました。そして、この小集会の2日後には、日本家畜管理学会の秋季シンポジウムと現地検討会を開催しました。このときのシンポジウムテーマは、「地域における人と動物の関わり」で、酪農教育ファーム、乗馬を用いた教育活動、鳥獣害対策を“日本家畜管理学会”のシンポジウムで取り上げました。参加された先生方からは、これが家畜管理のテーマかとのお叱りを受けたり、これが君の考える家畜管理の未来かとご質問を受けたことを昨日のように記憶しています。

それから約四半世紀を経た本年、アニマルウェルフェアを主軸にした家畜管理学の新たな展開を目指すべく、上記のようなテーマ、演題設定と致しました。そして今、応用動物行動学会と日本家畜管理学会との統合が検討され始めました。私自身、この激動の時代に身を置いていることを改めて実感している次第です。

今のところ、9月7日のシンポジウム後の懇親会は予定しておりませんが、皆さまからの声を伺ったうえで、場を設定することも、頭の片隅にはあります。皆さまの声をお聞かせください。

様々なイベントが予定されている中での開催でありますが、信州そば発祥の地、そして、家畜管理に関する新たな情報発信を行った信州に、ぜひ足をお運びください。

皆さまのご来場を心より、お待ち申し上げております。


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◇第13回国際エンリッチメント会議の参加報告

 

小倉匡俊(北里大学)


こんにちは。北里大学・SHAPE-Japanの小倉です。第13回国際エンリッチメント会議(International Conference on Environmental Enrichment: ICEE)が5月15日から19日にかけてコロンビアの首都ボゴタにあるParque Jaime Duqueにて開催され、参加と発表をしてきましたので、その様子をご報告します。

ICEEは世界中の動物園・水族館関係者が集い環境エンリッチメントについての情報交換をする場として、2年に1度、開催地を変えながら開催されています。今回コロンビアで開催されたICEEのプログラムは、基調講演、口頭発表、ワークショップ、その他に大別されました(これまでのICEEではこれに加えてポスター発表もおこなわれることが多かったのですが、今回の発表形式は口頭のみでした)。基調講演はThe Shape of Enrichmentの代表であるValerie Hareさんや、Oregon ZooのDavid Shepherdson博士、University of SalfordのRobert Young博士、Universidad de la SalleのFernando Nassar博士らといった面々によりおこなわれ、最新のエンリッチメント研究や今後の展望、コロンビアでのエンリッチメント事情などについてお話しがありました。今後の展望としては、エンリッチメントの効果の評価指標に焦点を当てる内容が総じて多かった印象があります。動物の老化や睡眠の質、Physical fitness(運動能力を適切に鍛えること)、表情などといった指標を評価に導入することが提案されていました。口頭発表はホスト園であるParque Jaime Duqueを始めとする南米各地の動物園からと、日本からの参加者による発表が大半を占めていました(日本からの参加者については後述します)。こちらは各園での事例や研究結果が多く紹介されており、海外の動物園での実情を知ることができました。これまでのICEEに比べてデータに基づいた発表が少なかった印象はありますが、それでも環境エンリッチメントが飼育管理の一環として根付いており、教育普及活動などにも活かされていることがよく分かりました。ワークショップでは、動物園で記録したデータの分析と統計処理をRによりおこなうためのレクチャーや、大学生向けの教育プログラムとして環境エンリッチメントを取り入れる際の注意点についてのグループディスカッションなど、多様なトピックが題材となっていました。環境エンリッチメントの取り組みの広がりを感じつつ、大学の担当授業やSHAPE-Japanの活動などに取り入れることができそうだな、、、ということを考えながら参加していました。

日本からは7名が参加し、日本の動物園で実施されている霊長類や食肉目を対象としたエンリッチメントや混合飼育について紹介しました。発表後にもディスカッションが続くなど多くの参加者の興味をひいたようでした。日本での取り組みも、少しずつ海外に追いつきつつあるようです。今回、遠いコロンビアの地で日本からの発表が多くの割合を占めたのは理由があります。それは次回2019年のICEEが京都で開催されるためです!コロンビアでの会期中にしっかりと次回開催をアピールし、既にウェブサイトもオープンしています(http://www.iceekyoto.org/)。多くの方のご参加をお待ちしていますし、応用動物行動学会の皆さまにはご協力をお願いすることもあるかと思います。快くお引き受けくださると助かります。詳細はウェブサイトで告知していきますので、チェックしながら楽しみにお待ちください!


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◇カラスのレシピ本「本当に美味しいカラス料理の本」を出版しました

 

塚原 直樹(総合研究大学院大学)


私、一応、自然科学系の研究者ではありますが、つい先日、ガチのレシピ本を出版しました(出版に伴い、「カラス料理研究家」を名乗ることにしました)。構想10数年のカラス料理のレシピ本です。レシピ本なのに材料が調達できないじゃん、っていうツッコミをよく受けます。決してふざけているわけではなく、研究の一環です。この場をお借りして、なぜ、カラスのレシピ本を出版したのか、私の想いをお聞きくだされば幸いです。

10数年前、某都知事が、カラスなんてパイにして食っちまえ、とご発言されました。増え続けるカラスの苦情に対し、食べて減らそう、というお考えだったのかもしれません。東京都だけでなく、日本全国でカラスを減らそうと、箱罠による有害鳥獣捕獲が行なわれております。この箱罠による捕獲ですが、繁殖個体はほとんど捕獲されず、カラスの個体数調整に有効であるかどうかは議論の余地があります。それはさておき、捕獲されたカラスはただ処分されております。箱罠には囮のカラスが必要で、そのカラスの飼育や箱罠そのものの設置、維持費用、誘引のための餌、捕獲されたカラスの処分費用など、少なくないコストがかかっております。多額の費用をかけて捕獲され、ただ処分されるカラス、もし食資源として利用できれば有益なのではと考え、カラスを食用化するための研究をはじめました。

しかし、カラスを食資源として利用するには、超えなければならないハードルがいくつかあります。中でも大きなハードルは、カラスを食べることに対する心理的抵抗感です。生ごみや屍肉を漁るカラス、そんなカラスを食べるなんて気持ち悪い、と思う方も多いでしょう。もし、カラスのイメージを変えることで、食資源として活用することができるのであれば、市場化を行う上でのノウハウやブランディング手法は、別の有害動物の利用に活かすことができると考えています。それは心理的抵抗感が非常に強いカラスであるからこそ、良いモデルになると考えています。

この本の出版も、カラスのイメージを変えるための一手です。興味を持ってくださった方、webで「本当に美味しいカラス料理の本」を検索いただき、ポチッとしていただけますと嬉しいです。


アマゾンでの購入はこちらから:
https://www.amazon.co.jp/dp/4990730836/ref=sr_1_2?





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◇新刊書籍「動物福祉の科学 -理念・評価・実践-」の紹介

 

加隈良枝(帝京科学大学)


本年5月に『動物福祉の科学-理念・評価・実践-』が緑書房より刊行されました。「動物福祉」について深く理解するために必要な内容が網羅されており、じっくりと読んでいただきたい1冊です。ただし専門領域は幅広く、倫理や経済から、生理や行動、遺伝などについての章までを含むので、難解に思われる部分もあるかもしれません。まずは知りたい項目から読んでみるのも良いでしょう。

本書の原題は”Animal Welfare” であり、第2版として2011年に刊行されたものがこのたび翻訳出版されました。英語版初版は1997年に刊行され、文字通り「動物福祉/アニマルウェルフェア」を網羅的に解説する書籍として、世界中の教育研究拠点で教科書・参考書として活用されてきました。初版の邦訳が刊行されたのは2009年で、当学会の当時若手といわれたメンバーが参集し、佐藤衆介先生と森裕司先生という、畜産学と獣医学における行動学の権威を監修に迎え、この分野の専門書が初めて翻訳出版されることに興奮したものです。今回、第2版の翻訳を進めるにあたっては、初版同様の関与を快諾してくださっていた森裕司先生が途中で逝去されたことは大きな喪失でしたが、10年近い時を経てほぼ同じ訳者に参加していただきました。皆さん中堅以上の立場になられ多忙を極めるなか、意欲的に作業に取り組んでくださいました。それでも出版が遅れてしまった大きな要因は、私の監訳作業が遅々として進まなかったためであり、この場を借りて心よりお詫びしたいと思います。無事出版の運びとなったのも、ひとえに監訳の佐藤先生と他の訳者の皆様のご尽力によるものです。

旧版の邦訳『動物への配慮の科学-アニマルウェルフェアをめざして』からの変更点としては、近年の研究の進展を反映し、旧版の歴史的考察を中心とした内容から、動物福祉の現状の総括へと重点が移行しているほか、新しく「動物福祉を評価(および改善)するための実践的戦略(第12章)」と「国際的な課題(第19章)」の2章が追加されています。さらに、著者が新しく大勢加わり、より最近の文献が多数引用され、文章もほとんど刷新されているので、訳者のほとんどが同じ章を担当しながらも、一から翻訳し直すことになったのは嬉しい誤算でした。また、日本語の問題としての大きな変更点が、animal welfareの訳語を旧版の「アニマルウェルフェア」から、「動物福祉」にしたことです。時代とともに「動物福祉」という言葉が広く知られるようになり、議論はあるものの概念のとらえ方も定着してきたことから変更に踏み切り、書籍タイトルもより原題に近いものとなりました。

編著者の中心人物は、初版・第2版ともマイク・アップルビーです。彼はエディンバラ大学や世界動物保護協会(WAP)に在籍し、応用動物行動学やISAE(国際応用動物行動学会)をけん引してきた研究者の一人であり、2015年のISAE札幌大会ではユーモアあふれる温かい人柄で大会を通じ目立っていたのも記憶に新しいところですが、昨年英国エディンバラで開催されたISAE50周年記念大会において、この学問分野への高い功績のためHonorary Fellowの称号を授与されています。

旧版を読み込んだ方も、改めて新版を読んでいただくと、動物福祉に関する学問の変遷や進展に大いに気づかされ、新しい情報を得ることができるでしょう。動物福祉に関する研究をしようとしている初学者や、動物福祉というものを根本的に理解したい一般の方にも、ぜひ本書をひもといていただけたら幸いです。

緑書房:http://www.pet-honpo.com/books/veterinary/post-194/



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◇京都市動物園 生き物・学び・研究センターの紹介

 

田中正之(京都市動物園 生き物・学び・研究センター)


京都市動物園には、生き物・学び・研究センターというセクションがあります。その名の通り、動物園で行う教育普及的な仕事の外に、自ら研究も行う研究員が働いています。生き物・学び・研究センターは、2013年4月に京都市動物園に新しく設置されました。私はこのときに、それまで勤めていた京都大学野生動物研究センターから、センター長としてこちらに移りました。

ただし、発足当時はセンター長の私と、獣医師で学芸員の係長(後に課長補佐)の2名しか専任スタッフはおらず、それぞれが得意分野を活かしながら、お互い協力して4年やってきました。そして今年の6月、あらたに常勤の主席研究員に加え、いわゆるポスドクに相当する非常勤の研究員、さらにセンターの活動を補佐してくれる非常勤嘱託員がスタッフに加わり、いっぺんに5人のセクションになりました。今後はセンターの研究活動をさらに進めるために、大学や研究所、博物館のように科研費の申請ができる学術研究機関としての指定を受けるべく、準備を調えているところです。



6月1日、門川大作 京都市長(写真中央)から新たにスタッフに加わった3人に辞令が渡された。(生き物・学び・研究センターのHP:http://www5.city.kyoto.jp/zoo/crew より)

ここで、生き物・学び・研究センターの京都市動物園における研究活動を紹介します。まず、2008年から9年間継続している「サルのお勉強」。動物園の「サル舎」にタッチモニターとパソコンを持ち込んで、数字の順番を覚える学習課題をやっています。お客さんからも見える場所でやっているので、掲示物で目的や進捗状況をお知らせするとともに、毎月「サルのお勉強のお話」と題するトークイベントも行ってきました。


写真のマンドリルのケージの向かいにはシロテテナガザルがいて、交互に課題をやってもらいます。これは、動物園でしか飼育していない希少種の認知能力を調べる研究としてだけでなく、動物たちにとっては頭を使って報酬を得られる環境エンリッチメントとして、さらにお客さんにこの種のもつ能力を直接見てもらえる「知性の展示」としての役割も持たせています。2009年からはチンパンジー、2014年からはゴリラでも同じ課題を始め、現在も継続中です。


新しく加わった研究員も、この「お勉強」を分担してもらえるようになったおかげで、私が時間がない日でも実施可能になりました。今後、京都市動物園を訪れてくれる皆さんに彼らの知性の輝きを見てもらえると思います。ただし、「お勉強」はあくまで参加する動物たちの自発的な意志によって行うものなので、本人がやる気がない日には全然やってくれないこともあります。たとえ食べ物をもらえても、やりたくないときにはやらない。遊びに夢中になっているときには見向きもしない。そんな姿も霊長類らしさでもあるので、どんな姿であれ、魅力的に映るのではないでしょうか。

 さて、新しく加わったスタッフ、とくに研究員の皆さんには自分の研究も企画し、進めてもらいます。せっかく動物園でやるのならば、そのことをお客さんに伝える機会を設けたり、理解が進む工夫もしてもらえると思います。また、それぞれの得意分野を活かした教育プログラムなども企画してもらえたらと思っていますし、夢は限りなく広がっていきます。これからの京都市動物園は、研究と教育の場としても注目してください。

京都市動物園のHP: http://www5.city.kyoto.jp/zoo/
生き物・学び・研究センターのHP: http://www5.city.kyoto.jp/zoo/crew

下記のサイトでも記事を掲載していますので、よろしければご覧ください。
・毎日新聞「きょうの動物園」https://mainichi.jp/ch160405678i/きょうの動物園

・どうぶつのくに.net ドクター・田中正之の「Edutainment in Kyoto Zoo」
http://www.doubutsu-no-kuni.net/?cat=122

・どうぶつのくに.net 京都市動物園の「サバイディー!エレファンツ」
 http://www.doubutsu-no-kuni.net/?cat=117

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◇編集後記   

深澤 充(NL担当 東北大学)

行動2017もいよいよ近づいてきました。発表される方、参加される方、他の学会との交流を楽しみましょう!!それ以外にも夏季には国際学会もたくさん開催されます。次号は、そんなたくさんの学会への参加報告が中心になります。

梅雨があければ本格的な夏です。熱中症に気を付けて、楽しい夏にしてください。




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ISAE2015 関連

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