書籍紹介「野生動物管理のための狩猟学」



伊吾田宏正(酪農学園大学)




 2013年1月に発行された「野生動物管理のための狩猟学」は、これまで我が国にない「狩猟学」の入門書または教科書として、出版社の朝倉書店の予想に反する売れ行きとなり、数ヶ月で若干の修正を加えて第2版が増刷されました。

 現在我が国では、増えすぎたシカやイノシシなどによる被害が増加している一方で、“絶滅危惧種”ともいわれるようになった捕獲の担い手である狩猟者は減少しています。本書の目的は、このような大きな転換期を迎えている日本の野生動物管理を考えていく上で、狩猟の役割を再認識することにあるでしょう。狩猟の技術書ではなく、今後の野生動物管理システムを再構築するためのたたき台を示したという意味で画期的な書であるといってよいでしょう。その意味で増刷は嬉しい予想外でありました。そういえば、欧米には数多の素晴らしい狩猟技術書が存在しますが、日本には殆どありません。この分野の良書の刊行も切望されます。

 さて、本書は2010年7月に東京農工大学で開催された国際シンポジウム「野生動物管理の担い手:狩猟者と専門的捕獲技術者の育成」の講演内容をベースとしています。加えて、この分野の新進気鋭の研究者たちなどによる書き下ろし文章とともにまとめられました。その中で、狩猟および野生動物管理の体制構築と人材育成は本書の重要なテーマとなっています。

 狩猟という活動は、人類の進化の過程で重要な意味をもっていました。大脳の発達や道具の発明との相互作用で狩猟も進化していったことでしょう。本書では、このような狩猟の起源からまず明らかにしていきます。そして、江戸時代以前から平成に至る狩猟と政治や行政の関わりを含め、現代の狩猟または野生動物管理を考えるために、狩猟の歴史を洗い出します。

 さらに、日本よりも狩猟がポピュラーで野生動物管理が発展している欧米の最新事例も紹介されます。シンポジウムで講演したアメリカやドイツの研究者も示唆に富んだ文章を寄せています。海外では、野生動物のモニタリングと“収獲”管理を業務とするプロハンターやワイルドライフ・マネージャーという専門職の配置がむしろスタンダードであることに気付かされます。

 我が国では、この分野は発展途上にあり、各地域で理想的な管理体制を模索している段階にあります。このため、本書は各著者によって、多少のニュアンスの違いがあるもの仕方ないことかもしれません。これも含めて、たたき台として多いに参考になる書籍でしょう。