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NEWSLETTER of The Japanese Society for Applied Animal Behaviour, No.34, OCT 2013

 
◇「野生と飼育下をつなぐ視線」

友永雅己(副会長・京都大学)






 副会長の友永雅己です。私の専門は比較認知科学です。チンパンジーや鯨類などの視覚認知能力について研究しています。ですので、基本的な研究の場は、霊長類研究所のような研究施設や、名古屋港水族館やのいち動物園のような水族館や動物園です。こういった飼育下の動物を研究するなかで、彼らの福祉とはどうあるべきかということについて考えるようになりました。飼育環境という、いかに努力しても制約を取り除くことのできない環境で、実験動物として特化していようがいまいが、彼らが「自然に」発揮するであろう行動レパートリーとその時間配分を適正化していくことが、彼らのQOLや福祉の向上につながるのだと信じています。このことの実現のためには、対象種が本来の野生環境下で示す行動をきちんと「見る」必要があると、頭の中では、いつも思っていました。


 でも、みなさんご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、わたしは20代、30代の頃、周りの人たちに「ぼくは絶対にアフリカにはいかないよ、だってお腹弱いし、体力ないし。」と公言していました。それがここ最近、アフリカと言わず、いろいろな場所に住む野生動物を見に行く機会を増やしています。その最大のきっかけは、科学研究費で大きな研究プロジェクトをスタートさせたことにあります。このプロジェクトは、大型類人猿とイルカなどの小型鯨類の比較認知研究の推進を目指しています。しかし、私は、実は野生のイルカというものを見たことがありませんでした。泳げないからです。でも、意を決して(というほどのもではありませんが)、天草のミナミハンドウイルカのウォッチングに参加して以来、彼らに魅了されてしまいました。ほかにも、土佐湾沖のニタリクジラのウォッチングにも何度か訪れました。これらは、まだ単に「見る」という域を超えていませんが、実際に、本来の生息域に暮らす鯨類を見ることのインパクトははかりしれません。この秋には羅臼に行って、マッコウクジラのウォッチングにも参加しました。残念ながら見ることはかないませんでしたが、この雄大な自然を前に、応用動物行動学の未来について物思いにふけりつつウニ丼を頬張るという至高の時を過ごしました。


 さらに、ここ3年ほど、ボルネオ島のダナンバレー保護区において、野生オランウータンの観察に同行するという機会も得ました。この地での彼らとの遭遇のインパクトもこれまたすごかった。まず、どこにいるかわからないほど高い木の上にいるということ。首を後ろに最大限曲げた状態で何分も双眼鏡やカメラを覗く。四十肩(五十肩?)の僕には苦行以外の何物でもないのですが、それが、記憶の中に強く刻み込まれているのです。動物園でみるオランウータンとは全く違う。このとき本当に、オランウータンの飼育関係者にもぜひこの姿を見てほしいと強く感じました。


 そしてついに、この夏、初めてアフリカのゴンベとセレンゲティにチンパンジーや野生動物を見に行ってきました。本学会でも活躍されているOさんの結婚披露宴の際に、同席した京大野生動物研究センターの前所長に、酔った勢いで「この8月、アフリカ行きます」と豪語したの運のつきでした。でも、すばらしかった。目撃個体数は昨年の観察ツアーの時よりもはるかに少なかったそうですが、そんなことは関係ありません。格子や堀を隔てることなく目の前にチンパンジーがいるのです。サファリカーの目の前をゾウの親子が横切るのです。「百聞は一見にしかず」という言葉の意味を再確認した1週間でした。


 動物の福祉を考える応用動物行動学にとって、野生動物というのは切っても切れない存在です。おそらく多くの学会員の方が、野生動物を実際に自分の目で観察する機会を持っていることと思います。どうか、その時のインパクトをぜひとも皆さんの研究に役立ててください。多少お腹をこわしたって(たぶん)死ぬことはありませんし、泳げなくてもライフジャケットが助けてくれますから。

ダナンバレーのオランウータン 天草通詞島のイルカウォッチング 超くさいHippo Pool (セレンゲティ) セレンゲティの耳かきをするきりン アフリカ、ゴンベ保護区のチンパンジー




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◇日本家畜管理学会・応用動物行動学会シンポジウムの報告

江口祐輔(シンポジウム担当・近畿中国四国農業研究センター)


 日本畜産学会第117回大会期間中の9月8日に日本家畜管理学会・応用動物行動学会シンポジウムを開催いたしました。本シンポジウムは、「野生動物研究最前線」—若手による研究発表会—と題し、最近、博士号を取得した小山奈穂氏、豊田英人氏、加瀬ちひろ氏、小倉匡俊氏に博士論文の研究を紹介していただきました。小山氏がゾウ、豊田氏と加瀬氏がハクビシン、小倉氏がニホンザルをそれぞれ研究対象とし、ゾウとニホンザルは飼育個体、ハクビシンは野生個体と捕獲後飼育した個体を扱っていました。さらに目指すゴールはエンリッチメント、認知、繁殖特性、運動能力、被害対策と多岐にわたっておりました。いずれの研究も野生動物を対象としながら飼育管理技術と行動学的手法を駆使することで、野生動物へのより深い理解を導いていました。まさに応用動物行動学と家畜管理学の視野の広さと将来性が感じられるシンポジウムとなりました。


 小山氏は「国内のゾウ飼育における福祉的管理法の検討」と題して、日本おいてゾウを飼育しているほとんどの動物園の飼育形態を明らかすることで現状把握と問題点を浮き彫りにして、福祉に配慮したより持続可能なゾウの飼育管理法についての方向性を示しました。管理者が給餌の有無に関わらず日常管理の中でゾウと関わる機会をより多く作ることはゾウの精神的安定や社会性の発揮に寄与する可能性が示され、飼育管理を通した福祉的配慮や行動学的知識に基づいたトレーニング技術の構築にも努めることが重要と述べていました。


 豊田氏は「ハクビシンの繁殖特性に関する行動学的・生理学的研究」と題して、まだまだ謎に包まれていたハクビシンの繁殖について、解剖学的、生理学的データを収集するとともに、飼育個体の観察を行ない、膨大なデータから総合的にハクビシンの繁殖を明らかにしました。また、ハクビシンの行なうマーキングの意味についても非常に興味深い考察がされていました。


 加瀬氏は「ハクビシンにおける侵入行動の解明および家屋侵入防止技術への応用に関する行動学的研究」と題して、急速的に広がっているハクビシンの農作物や家屋侵入被害を防ぐため、被害の前線基地となっている家屋(神社仏閣、倉庫、住宅の屋根裏など)侵入行動を明らかにするとともに、侵入防止対策と考え方を示しました。様々な隙間をハクビシンがあの手この手でとおり抜けようとする姿が聴衆の方たちの目にも焼き付いていると思います。


 小倉氏は「ニホンザルの環境エンリッチメントにおける認知的基盤」と題して、実験動物として個別飼育されるニホンザルに対する環境エンリッチメントに新しい視点で挑みました。ニホンザルが持つ認知能力を発揮する機会を提供することが、動物福祉への 配慮につながると考え、まず、4種類の動画に対して各個体の好む動画が違うこと、動画の新規性が大切なことを明らかにしました。さらに、画面にタッチして動画を操作すること自体が、報酬として機能することを報告しました。この動画呈示による環境エンリッチメントは異常行動の減少につながり、今後のエンリッチメントに新たな可能性を示しました。


 最後に、今回の講演を快く引き受けていただいた4名の演者にお礼申し上げます。講演の詳細な内容については今後の学会誌に報告する予定です。

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◇「野生動物研究最前線」
—若手による研究発表会—に参加して

木内明子(信州大学4年)

 9月8日、新潟大学の五十嵐キャンパスにて、応用動物行動学会シンポジウム・若手による研究発表会が開催されました。


 最初の発表は田方農業高等学校の小山さんによる、動物園飼育におけるゾウのエンリッチメントについてでした。動物園での飼育動物のエンリッチメントは、限られた飼育設備の中で動物が健康に生きるためにも、希少な動物の域外での保全をすすめるためにも、これから益々注目されていく内容であるのだと感じました。動物園動物についての研究は、対象の個体数が少ない、展示動物であるため自由な研究設定がしにくい、など難しい面もあるのではないかと思いますが、今後のために動物園と研究機関が協力して研究を行っていく必要があるのだと思いました。


 続いて埼玉県こども動物自然公園の豊田さんのハクビシンの繁殖特性の発表がありました繁殖可能である季節や受胎数、経産率などが調べられていました。次の自然環境研究センターの加瀬さんによる発表もハクビシンについての内容であり、こちらは家屋などへの侵入行動を扱っていました。実験風景の動画を見ることができ、ハクビシンの運動能力の高さに驚かされました。


 最後は京都大学野生動物研究センターの小倉さんによるニホンザルの環境エンリッチメントにおける認知的基盤についての発表でした。動画を流し、ニホンザルがどのような動画に興味を示すかなど、少し難しい内容でしたが、とても勉強になったように思いました。最終的にはYouTubeでキーワードに該当する動画をランダムに見せていて、まるで休日の私ではないかと思いました。


 今回のシンポジウムは、若手研究者の皆さんに焦点をあてたものでしたが、内容も多岐にわたり応用動物行動学の学問の広さがとても印象に残りました。どの発表者の方も熱心に研究に取り組まれていて、今後各分野で活躍されていく方々なのだろうと思いました。私自身は、前日に所属している部の遠征があり、寝てしまうのではないか!と恐れていましたが、非常に興味深く、様々な分野の新たな知識を得ることができたように思いました。またこのような機会があれば是非参加したいと思います。


 最後に、学部生の分際でこんなことを言うのも生意気と言われてしまうような気がするが、畜産学会を含め、今回の学会で少し残念に思ったのは、学生の参加がとても少なかったことである。もちろん、エライ先生方から貴重なお話を聞かせていただけるのは非常にためになるし、しょうもない質問にも丁寧に答えてくださりとてもありがたいのだが、せっかくの機会なのだから他の大学の学生の方々とも知り合って情報を交換したり、同世代でも盛り上がりたいなあというのが本音である。私が今回新潟での学会に参加しようと思った理由(の1つ)は、新鮮なおさかなが食べたいという不純なものであったし、釣りに行ったり、神社に行ったり、水族館に行ったり…と、学会で知識を深めつつ、学会の開催地で観光するのも醍醐味なのではないかと思う。次の学会の学生参加者がもっと増えれば嬉しいなあ。


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◇応用動物行動学・夏の学校 報告

新村 毅(基礎生物学研究所・総合研究大学院大学)


 2013年9月2・3日(月・火)に、「応用動物行動学・夏の学校」と題した集いを、長野県の高遠にある国立信州高遠青少年自然の家において、応用動物行動学会・日本家畜管理学会の共催で開催した。


 夏の学校は、学部生や大学院生などの若手研究者が一堂に会し、応用動物行動学を牽引する講師陣や同世代の仲間など、年齢や分野の垣根を超えて交流する合宿形式の研究会で、先端の研究を学ぶだけでなく、グループディスカッションを通じて研究の楽しさを発掘したり、応用動物行動学について語りあったりする場を提供することを目的としていた。
講師は、エンカレッジレクチャーとして佐藤衆介氏(東北大)、研究レクチャーとして竹田謙一氏(信大)、山梨裕美氏(京大WRC)、小原愛氏((株)イシイ)、技術レクチャーとして矢用健一氏(生物研)、小針大助氏(茨大)の6名の豪華講師陣を迎えることができた。参加者は、全国から25名が集まり、学部1年生からポスドクまでの参加があった。予想とは異なり東京・神奈川からの参加は2名に留まったものの、北海道と九州からの参加があったのは驚きであった。最多は信州大学で、8名の参加があった。


 夏の学校では、講演以外にグループディスカッションを各日に1回ずつ、合計2回企画した。5名ずつのグループにわかれ、全参加者が自身の研究内容あるいは構想中の研究について説明し、それに対する質疑応答・議論をするというものである。各グループの議長も、参加者の中から選抜し、講演者もディスカッションファシリテーターとしていずれかのグループに参加してもらった。懇親会も含めてであったが、19時から始まった1日目のグループディスカッションが翌日1時(男性講師陣で3時)まで続いていたことが、この夏の学校の全てを物語っていたように思う。後日お願いしたアンケートは、22名から回答を頂くことができた(回収率88%)。以下に、参加者からのアンケート結果と伴に、今回の夏の学校を、もう少し詳しく振り返りたい。

 夏の学校のポイントの1つと認識していた講演であったが、講演者のトークは、まさに応用動物行動学を牽引するにふさわしい方々ものであった。夏の学校らしく若手へのメッセージも含まれた講演は、「普段話すことのできない大御所の情熱を感じることができた」、「現場の意見に共感した」、「新しい技術に刺激を受けた」、「専門知識をさらに掘り下げることができた」、「新しい知識を得ることができた」などの意見が集まった。「興味深かった講演は?」の質問について、全講演者がほぼ同数の票を得ていたことから、多様な参加動機を持つ参加者のニーズに答えられた講師陣だったとも言える。良い評価を受けることができたように思う。



 グループディスカッションについては、5点満点中の平均点が4.6点と非常に高い評価を得たと言える。「自分の研究に対して貴重な意見・アドバイスを聞けた」、「様々な分野、様々な動物の研究を聞けた」という意見が大半を占め、その他には「世代、地域、動物を超えた議論ができた」という意見や「2日目のグループディスカッションの時間が足りなかった」という指摘も多かった。合宿形式についての質問は、68%が「合宿形式は良かった」と回答しており、開催地周辺の参加者を除けば、ほとんどの参加者が、合宿形式が良いと回答していた。もう1つの夏の学校の最大のポイントは、グループディスカッションであったが、前述したように、翌日1時まで続いていたことが全ての答えのように思う。とにかく自分で喋る、そしてそれに対してたくさん質問される、議論が盛り上がる、興味を持ってもらう、意見・アドバイスをもらうということが最も重要なことであると認識していた世話人は、全参加者に発表をお願いし、グループディスカッションを時間が気にならない合宿形式の最後に回し、アルコールで喋ることを円滑にし、さらに豊富な知識・経験を有する講師と議長を各グループに配置した。しかし、そのような世話人の想像を超え、実際には参加者全員が能動的に議論に真剣に取り組んで質問し、勝手に盛り上がっていたように思える。「参加者の方々から熱い情熱・元気をもらった」という意見にあるように、グループディスカッションを盛り上げてくれた参加者全員に厚く感謝申し上げたい。


 次に参加費・宿泊費・懇親会費についてであるが、64%の参加者が「適当」と回答した。学会からの補助を受けることができたため、今回の参加費は無料であった。学生は食費2,200円のみ、ポスドク以上は懇親会費を含めて7,200円であった。教員の方々は、この金額を聞くと破格だと思うのではないだろうか?しかし、学生は、これで適当だと思うのが実際である。私がそうであったように、学生はそれくらい貧乏であるということを再認識して頂ければ幸甚である。そのような学生のために、参加費をできる限り安くするというのが、夏の学校を企画するにあたり最初に考えたことである。補助金を支出してほしいという考えを快諾して頂いた、応用動物行動学会会長・副会長ならびに幹事の皆様には厚く御礼申し上げたい。


 アンケートの最後では、次回以降の開催について伺った。その結果、1年後の開催の希望が68%であった。「またあったら参加したいか?」という質問に対しては、「ぜひ参加したい」が41%、「参加したいが場所次第」が23%であり、「参加したいが難しそう」も23%であったが大部分が次年度就職者であった。これらの結果から、多くの参加者が次も参加したいという意見を持っていることがわかり、高い評価を受けたと言える。しかし、今回の開催地は非常に安価で綺麗な施設であったものの、アクセスはしにくい所であった。場所次第と思う参加者の意見は、次回以降の検討事項として考慮したい。


 以上のように、アンケート結果から、多くの参加者に夏の学校を楽しんでもらえたと思える。大学や学会では味わうことのできない魅力を出すこともできたように思える。講演者による情熱のあるトークと、参加者による能動的なグループディスカッションが成功に導いてくれた。参加者全員に、心から御礼申し上げたい。
世話人の思いの1つとしては、応用動物行動学会らしい若手を大事にする伝統と、それに呼応するような学生・ポスドク達の能動的な行動は、他の学会にはない良さであると確信している。しかし、応用動物行動学を牽引して来た大御所の世代、牽引している中堅の世代を考えると、若手に勢いがあるようには思えない。夏の学校を通じて、今後の応用動物行動学を担う若手が出てくることを、何よりも期待したい。


 最後に、夏の学校では、多くの方々に御協力頂いた。宿泊ロッジの責任者、議長の方々、中でも竹田謙一氏をはじめとする信州大学の皆様には準備段階から非常にお世話になった。また、この企画をご快諾頂いた応用動物行動学会、日本家畜管理学会両学会長ならびに幹事の皆様、さらには、参加を学生に呼び掛けて頂いた研究室PIの先生方、企画を成功に導いてくれた講演者と参加者の方々に、この場をお借りして感謝申し上げたい。



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◇応用動物行動学会・日本家畜管理学会共催「夏の学校」参加報告

菊池紀子(茨城大学 4年)




 私は2013年9月2日から3日にかけて、長野で行われた研究会に参加させていただきました。私は今回が初めてだった為多少の不安もありましたが、普段なかなか接することのできないような他大学の方たちや、講師の方々と多くの意見を交わし合うことのできる機会に期待を抱いての参加でした。


 講師の方たちのレクチャーに関しては、東北大学の佐藤衆介先生に始まり、小原愛さん、信州大学の竹田謙一先生、茨城大学の小針大助先生、京都大学・日本学術振興会の山梨裕美さん、農業生物資源研究所の矢用健一さんがそれぞれに興味深い講義をレクチャーしてくださいました。特に山梨さんの「飼育チンパンジーとわたしの福祉」というテーマの講義は、ウェルフェアに関心がある自分にとってとても印象的で、チンパンジーの知能の高さに驚くとともに、研究を通したチンパンジーの行動に大きな興味を抱くものとなりました。


 また講義に加えグループディスカッションの場も設けられ、大学も年齢も研究内容もバラバラな皆が集まり各自研究内容について議論しました。私は『獣舎改装工事による運動環境の変化が飼育下のキリンの行動に及ぼす影響』をテーマとして動物園動物を対象とした研究内容について意見を頂きました。様々な意見や質問が飛び交う中で、より研究を有意義なものにする為のアドバイスを頂いたことで、今後の研究における改善点等も見つけることができました。またそれだけではなく、他の方たちのそれぞれに異なる動物を用いた研究内容を聞いて、非常に興味を抱くような研究、意外なところに着目した研究など、実に幅広い分野での議論が行われ、自身の視野が広がり、自身の研究への意欲がさらに掻き立てられました。


 今回の「夏の学校」への参加は自身にとって大変貴重な経験となりました。初めての参加でしたが得られたものは多く、他の方たちの熱心な研究に圧倒され関心をもつとともに、動物を扱うことの難しさや面白さも改めて実感できるよい機会となりました。


 他大学や講師の方たちとの意見交換で得たことはとても有意義であり、このような場を設けていただけたことに感謝すると同時に、また機会があればぜひ参加させていただきたいと思います。




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◇夏の学校に参加して

八代 梓(東海大学 修士1年)

 2013年9月2・3日(月・火)に、応用動物行動学会初めての試みとなる若手研究者のための「夏の学校」に参加しました。会場は、国立信州高遠青年の家という長野県の山奥の宿泊施設でした。


 初日は天気が大荒れで、電車が予定の時間より1時間半ほど遅れるほどでした。しかし、会場に到着すると、昼食をとっている参加者の方は天気など物ともせず、すでに会話が盛り上がっている様子でした。午後からのレクチャーでは4人の先生の講演がありました。佐藤先生は「僕の前に道はない、僕の後ろに道はできる」というタイトルで、先生の研究の原点にある幼い頃から現在の研究に至るまでのお話でした。小原さんは「ブロイラー産業におけるアニマルウェルフェア」というタイトルで、ヨーロッパやブラジルなどでのアニマルウェルフェアの普及状況などの研究結果をお話しくださいました。竹田先生は「野生動物の行動を科学的に制御する」というタイトルで、先生が大学生だった頃から現在までのいきさつや、鳥獣害に関する研究内容についてのお話でした。小針先生は「動物の行動調査法を考える」というタイトルでGPSや動画解析システムなどの行動調査での活用方法についてお話しくださいました。その後、入浴と食事をすませ、お酒を飲みながらのディスカッションが行われました。5,6人程度のグループに別れ、一人ずつが準備してきたプリントやポスター等を用いて、自分の研究について発表を行い、その後質問やアドバイスなどを行うという形式でした。このディスカッションは7時から始まり、深夜2時近くまで繰り広げられました。


 2日目は青年の家の恒例である朝のつどいから始まりました。なぜかラジオ体操が英語で朝から新鮮な気持ちになることができました。朝食の後は2人の先生の講演がありました。山梨さんは「チンパンジーと私の福祉」というタイトルでチンパンジーの異常行動やストレスなど、チンパンジーの映像を交えてお話がありました。矢用さんは「行動を生理学的側面から解明する」というタイトルで、動物にはリズムがあり、それを乱すとストレスになるという点から、その研究方法などについてのお話がありました。そして、最後に1日目とはメンバーを変えてのディスカッションが行われ、解散となりました。


 この夏の学校では、ディスカッションの時間に限らず食事の時間や入浴中まで、あちらこちらで研究内容などについての話が絶えなかったことが印象的でした。私の所属している東海大学の阿蘇校舎は地理的にも、人里から孤立しておりますし、院生の人数も少なく、研究について人と話す機会がほとんどありません。今回の夏の学校で同年代の研究者と議論ができたことによって、自分の研究を今までと違った角度から見ることができましたし、同じように研究している人がいることを知って、モチベーションを高めることができました。ぜひ、夏の学校のような勉強会を来年以降も続けていただきたいと思います。このような機会を提供してくださった世話人の新村様、研究への向き合い方や技術について教えてくださった講師の先生方、共に議論を深めた若手の参加者の皆様、ありがとうございました。




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◇日本野生動物医学会ワークショップを開催して

山崎彩夏(SHAPE-Japan)





 こんにちは、SHAPE-Japanの山崎です。2013年8月29日〜9月1日に開催された第19回日本野生動物医学会において、9月1日に京都市動物園にてワークショップ「動物園動物の行動研究:行動観察をしてみよう!」を応用動物行動学会とSHAPE-Japanで共同開催したのでご報告します。ワークショップの目標は、動物飼育に携わる、もしくは将来的に携わる人々に行動観察の基礎を体験してもらうこと。行動観察は、動物の内的状態を定量的かつ客観的に把握する上で、適切な手順で実施さえすれば、低コストで誰でもおこなうことが可能な有力な方法です。当日は、学会最終日で他に魅力的な企画がいくつも並行していたにも関わらず、22名の方達が参加してくださいました。


 ワークショップは二部構成で、前半はレクチャーがおこなわれました。まず、「何故動物園で行動観察をするのか?」というテーマと共に、アニマルウェルフェアと環境エンリッチメントの概要について紹介されました。次に、行動観察は飼育管理の場面においてどのように活用することができるのか、さらには、そのために如何にデータ収集をおこなう必要があるのかといった行動観察の具体的方法について説明がなされました。その上で、動物の動画を使って、参加者全員にさまざま観察方法にチャレンジしてもらいました。普段誰もが何気なく目にしている動物の行動ですが、行動の記録間隔が一分でも意外に短く、合図のアラームがなった瞬間に画面と観察シートを熱心に見比べる参加者の方々の顔は真剣そのものでした。


 そしてワークショップ後半は、ゴリラ、キリン、フラミンゴの3グループにわかれ、園内にて行動観察をおこないました。それぞれのスポット別にスタッフが数名同行し、個体識別や予備観察の重要性などポイントの説明をおこなった後、用意された観察シートに行動の記録をしていきます。行動観察を終えた後は、再び屋内へ戻り、個別のデータ集計や、他の人が収集したデータと比較するなどの分析作業にとりかかりました。各グループで は、複数人で行動観察をおこなう上で留意すべき点はあるのか、異常行動が確認された場合はどういったデータの取り方が効果的なのかなど、実際に動物飼育やその観察をおこなうことを想定したさまざまな質疑や議論が参加者とスタッフ全体を通じてなされ、各グループともなかなか話題はつきなかったようです。最後には、アニマルウェルフェアや環境エンリッチメントに興味を持った参加者へ向けて、応用動物行動学会やISAE2015、SHAPE-Japanについての紹介がなされてワークショップは終了しました。


 参加者からのアンケートには、「本で読むよりも実際に話を聞いて実践することで、理解がしやすいと思った。今後も仕事の中でもいろいろな手法での観察を取り入れたい。」「行動観察にこれほど様々な方法があることを知らなかったので勉強になった。」「いつもとは違った視点で動物をみることができた。」「動物園動物をここまで細かく観察したことはなかったので、新鮮な体験だった。」という感想が寄せられました。このような機会に快く学びの場をご提供いただいた京都市動物園の皆様、全国からご参加いただいた参加者の皆様、日本野生動物医学会の皆様ありがとうございました。SHAPE-Japanは、環境エンリッチメントについて、動物飼育の現場とアニマルウェルフェア研究を結びつけるような情報共有とネットワークづくりを目指し今年度から活動を始めています。今後も様々な場所で多様なワークショップを開催していきたいと考えています。ご興味がある方は是非お声かけください!


SHAPE-Japan:http://www.enrichment-jp.org/




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◇第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会
2013年度合同大会(MPJ2013)に参加して

南 正人(麻布大学)



 MPJ2013は、9月6日から9日まで岡山理科大学で開催されました。岡山理科大学は岡山市街を望む丘の上にあり、立派なビル群で構成されていました。驚いたのは、大学のバス停から屋外のエスカレーターで林を見ながらキャンパスに登って行くことでした。 


 両学会の共通のテーマを考慮して公開シンポジウム「動物と人間社会—現代社会の変容とその影響—」が開催されたほか、両学会員が協力して自由集会が2、ミニシンポジウムが26開催されました。また、口頭発表が120題、ポスター発表が245題、中高生ポスターが10題、さらに動物園水族館企画展示と日本哺乳類学会創基90周年記念展示など、盛りだくさんでした。


 ミニシンポジウムは、「哺乳類の食—探索から消化まで」「東南アジアの古哺乳類学」「哺乳類・霊長類・人類の島嶼化を考える」など基礎生物学的なテーマから、シカ、クマ、サルなどの保護管理に関するテーマ、研究や分析の手法に関するテーマ、さらに原発事故による放射能の影響に関するものなど広い範囲にわたっていました。口頭発表やポスター発表も遺伝学、形態学・比較解剖学、系統進化、行動や社会・生態、保護や保全などの分野がありました。認知や心理という分野の発表が一角を占めていて、霊長類学会らしい感じがしました。哺乳類学会ではこの分野の研究はほとんど無くて、興味深い発表でした。


 私は哺乳類学会を中心に活動していますが、哺乳類学会では行動や社会に関する発表は近年多くはありません。しかし、さすがに霊長類学会ではまだまだその分野の発表が多く、刺激を受けました。また、霊長類学会の会員の方の質問には観察した現象に対する理論的な解釈についての鋭い質問が多く、日常的な議論が活発に行われていることが想像されました。私は霊長類学会の会員とミニシンポジウム「野生動物の行動観察入門」を企画しましたが、100名を越える学生や若い研究者に集まっていただけました。行動観察を充分行える対象種は多くはありませんが、それでも工夫次第で可能になること、さらに充分見えていてもサンプリング方法が正しくなければ良い研究にならないことを、反省を込めて再確認しました。この分野の若い研究者が増えることを期待します。


 私もシカの保護管理にもかかわっていますので、保護管理の手法や計画、管理体制などの学会での発表や議論はとても勉強になりました。しかし、それ以上に、生物がどのように生きているのか(生きてきたのか)を解明する研究が増えることを期待します。その意味で、霊長類学会との合同大会をときどき開催してほしいと思いました。








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◇書籍紹介「野生動物管理のための狩猟学」

伊吾田宏正(酪農学園大学)




 2013年1月に発行された「野生動物管理のための狩猟学」は、これまで我が国にない「狩猟学」の入門書または教科書として、出版社の朝倉書店の予想に反する売れ行きとなり、数ヶ月で若干の修正を加えて第2版が増刷されました。


 現在我が国では、増えすぎたシカやイノシシなどによる被害が増加している一方で、“絶滅危惧種”ともいわれるようになった捕獲の担い手である狩猟者は減少しています。本書の目的は、このような大きな転換期を迎えている日本の野生動物管理を考えていく上で、狩猟の役割を再認識することにあるでしょう。狩猟の技術書ではなく、今後の野生動物管理システムを再構築するためのたたき台を示したという意味で画期的な書であるといってよいでしょう。その意味で増刷は嬉しい予想外でありました。そういえば、欧米には数多の素晴らしい狩猟技術書が存在しますが、日本には殆どありません。この分野の良書の刊行も切望されます。


 さて、本書は2010年7月に東京農工大学で開催された国際シンポジウム「野生動物管理の担い手:狩猟者と専門的捕獲技術者の育成」の講演内容をベースとしています。加えて、この分野の新進気鋭の研究者たちなどによる書き下ろし文章とともにまとめられました。その中で、狩猟および野生動物管理の体制構築と人材育成は本書の重要なテーマとなっています。


 狩猟という活動は、人類の進化の過程で重要な意味をもっていました。大脳の発達や道具の発明との相互作用で狩猟も進化していったことでしょう。本書では、このような狩猟の起源からまず明らかにしていきます。そして、江戸時代以前から平成に至る狩猟と政治や行政の関わりを含め、現代の狩猟または野生動物管理を考えるために、狩猟の歴史を洗い出します。


 さらに、日本よりも狩猟がポピュラーで野生動物管理が発展している欧米の最新事例も紹介されます。シンポジウムで講演したアメリカやドイツの研究者も示唆に富んだ文章を寄せています。海外では、野生動物のモニタリングと“収獲”管理を業務とするプロハンターやワイルドライフ・マネージャーという専門職の配置がむしろスタンダードであることに気付かされます。


 我が国では、この分野は発展途上にあり、各地域で理想的な管理体制を模索している段階にあります。このため、本書は各著者によって、多少のニュアンスの違いがあるもの仕方ないことかもしれません。これも含めて、たたき台として多いに参考になる書籍でしょう。

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◇ISAE Returns!

山田弘司(酪農学園大学)
森田 茂(酪農学園大学)

「ISAE 2015開催のご案内!」

国際応用動物行動学会が2015年に北海道で開かれます。
2005年に麻布大学で開催されてから,はや8年,ISAEが日本に戻ってきます。

「基本方針と組織固まる!」

2013年3月の総会で決定後,内容の詳細について検討を続けてきました。
9月の新潟での集会で,方針や,組織など詳細が固まりましたので,お知らせします。

「スクープ!学会のメイン・テーマは
「Ethology for Sustainable Society」!」

この段階で,発表するのは勇み足かもしれませんが,書いてしまいました。

「これまでの経緯」

2010年2月

 日本でのISAE2015開催打診を受ける。
2010年9月

 国内関係者での協議が始まる。
2011年8月

 ISAE 2011(インデアナポリス)の総会にて、ISAE 2015の日本開催が決定される。
2012年

 ISAE 2012に偵察隊を送り込む。
2012年

 早くも懇親会場を内定する。
2012年

 学会会場を仮押さえする。これで外堀はすべて埋まった。
2013年3月29日

 応用動物行動学会・日本家畜管理学会春期大会で,学会として開催することが正式に承認される。
2013年9月5日

 新潟大学にて会合を持ち,大会組織が固まる。内堀も埋まる。


・大会委員長 近藤誠司(北大)
・実行委員長 森田茂(酪農大)
・プログラム編成委員長 植竹勝治(麻布大)
・広報委員長 安江健(茨城大)
・顧問団 そうそうたるメンバーを予定

「今後の予定」

気持ちが入りすぎているかもしれません。
カッコ内は,みなさんがとるはずの行動を表しています。


2013年11月頃

 学会のメインテーマが公表される。すでにスクープ済み。 
2013年12月頃

 学会ホームページの原稿書きに精を出す。
2014年4月頃

 学会ホームページがめでたく開かれる。
2014年4月頃

 講演の演者を決める。
2014年11月頃

 参加登録を始める。(発表内容を決める)
2015年2月頃

 (抄録作成に汗を流す)
2015年3月頃

 発表抄録受付締め切る。(なんとか間に合う)
2015年7月頃

 プログラムが完成する。
2015年8月

 (発表準備に余念がない)
2015年9月14~17日
 学会が開催され,盛会にて幕を閉じる。


以上,希望や期待をこめて書いてみました。


実施にあたっては,実行委員会だけではカバーしきれないことがあります。
会員みなさんに協力していただきながら,進めていきたいと考えています。
どうぞよろしくお願いします。








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◇ISAE(国際応用動物行動学会)大会2014の告知

二宮茂 (岐阜大学 国際連携担当幹事)




 2014年のISAE(International Society Applied Ethology)の大会は、スペイン開催です(大会HPのURL: http://www.isae2014.com/)。日程は、2014年7月29日~8月2日、場所はバスク州の州都、ビトリア ガステイスです。ヨーロッパ開催ということもあり多数の参加者が見込まれています。また、見逃せない招待講演も多数予定されるようなので、皆様奮って参加下さい。なお、発表要旨の提出期間は2013年11月11日~2014年2月7日となっています。


 なお、応用動物行動学会では、毎年、国際応用動物行動学会議(ISAE)派遣等基金からISAE参加旅費補助の助成を行っています。ISAE2014に関する助成も、今後、当学会のHPやメーリングリストなどを通じてアナウンスされると思います。

ISAE2014:http://www.isae2014.com/









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◇2014年度春季研究発表会の開催予告

矢用健一(大会担当・農業生物資源研究所)

応用動物行動学会・日本家畜管理学会合同の2013年度春季研究発表会とシンポジウムを以下の予定で開催します。詳細は次号でお伝えしますが、学生(大学院生含む)を対象とした優秀発表表彰を引き続き行う予定ですので、ご準備抜かりなく。


日程:2014年3月25-26日
場所:文部科学省研究交流センター
   (つくば市竹園)



















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◇編集後記 

深澤 充(東北農業研究センター)




 今年は台風が多いように感じますが、一つ過ぎることに秋の深まりを感じます。職場から望む岩手山にも冠雪が見られる様になりました。猛暑の年は、秋が短く、冬の寒さが厳しくなる傾向とのこと。会員の皆様におかれましても、体調の管理には十分にご配慮下さい。


 年内発行のニュースレターは今回10月号で最後です。次号のニュースレターは、新年1月号になります。次号は3月の大会の内容が中心の構成になる予定です。


 すごく早いですが、良いお年をお迎え下さい。



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