ホームニュースレター>ニュースレター46号

NEWSLETTER of The Japanese Society for Applied Animal Behaviour, No.46, OCT 2016

◇巻頭言
 

友永雅己(副会長・京都大学霊長類研究所)

さて、この夏は私にとって「てんやわんや」の数か月でした。まず、7月16-17日には鹿児島で日本霊長類学会があり、参加しました。この頃は会員の多くの方がエディンバラでのISAE2016に参加されていたのではないでしょうか。私の指導する学生の一人もISAEに参加しており、なんとポスター発表賞を受賞したという知らせを(Facebookを通して)受け取りました。彼にとっても励みになることでしょう。

私の方は、かごしま水族館にも立ち寄り、イルカでの共同研究の打ち合わせをしてきました。ここ数年、チンパンジーだけでなく、イルカを対象とした比較認知研究も進めてきました。ご存知のように鯨類を取り巻く日本や世界の状況は激変してきています。アメリカのシーワールドではシャチのショーが中止になったり、ボルチモアの水族館ではイルカサンクチュアリ(イルカの野生環境への再導入)の計画が公表されたりしています。また国内でも太地での問題を皮切りに繁殖の問題などが大きな議論を巻き起こしています。このような中で応用動物行動学研究が果たす役割は非常に大きいと思われますが、応動行での水族の研究発表が非常に少ないのは少し残念ですね。

さて、かごしま水族館では、液晶モニタを用いた実験を始めました。とはいっても、液晶モニタをプールに入れるわけにもいきませんから、お客さんの側においてそこにやってきたイルカが吻タッチをすると人間がそれをパソコンに入力するという形で進めています。また、イルカについては愛知県の南知多ビーチランドでも共同研究を始めました。こちらでは、エコロケーションで「数」が認識できるかという課題に取り組んでいます。数と言えば、春の学会では全く反応がなかった(笑)ウマの研究ですが、こちらも順調に進捗しています。ただし、乗馬の腕前は全く上達していないので、コンドウ先生などにいつかご教授願えればと考えています。

7月の後半には、横浜で国際心理学会が開かれました。応動行関係でも2件のシンポジウムが開かれました。国際的な心理学の場ではアニマルウェルフェア研究はまだまだマイナーな領域ですが、二宮さん、山梨さん、新村さんをはじめ、熱心に企画運営をしていただきました。メイン会場が超満員となったジェーン・グドールさんの招待講演と比べれば、こじんまりとしたシンポジウムでしたが、参加者の熱気が感じられるいい会だったと思います。

この国際心理学会には、リクガメの認知研究で有名なアンナ・ウイルキンソンが参加しており、会議の後、犬山の京都大学霊長類研究所に滞在しました。せっかくだからということで、私が学術部長を兼任している公益財団法人日本モンキーセンターにいる2頭のケヅメリクガメ(キッズズーで暮らしています)で研究をしようということになりました。テーマはもちろん「数」。意地でやってます。結果はもちろん「カメも数がわかる!」。結果はいずれどこかでご紹介できればと思います。このキッズズーには、ほかにヤギもいます。ということで、ヤギでもタッチパネル課題の訓練を始めています。ヤギってかわいいですね。そしてかぐわしい。 このように、この夏は、チンパンジーだけでなく、さまざまな動物を対象とした研究に視野が広がるすばらしい夏でした。皆さんの夏はいかがでしたか?夏の努力が豊かに実る秋となることを期待しています。そして、また春に学会でお会いしましょう。成「果」を味わうのを楽しみにしています。


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国際応用動物行動学会50周年記念大会(ISAE2016)の報告
 

二宮 茂(国際連携担当幹事・岐阜大学)

国際応用動物行動学会(ISAE)の今年の学術集会は、設立50周年の記念大会でした。例年の倍以上の参加者(500人超)で、大盛況でした。当然、研究発表数も例年以上で、要旨締切時点では450近くになったようでした。その後、発表の取りやめや例年よりも厳しかった要旨審査があり、最終的には374の演題がプログラムされました。これはISAE2015の倍以上の発表数(ISAE2015では170超)だったわけで、この数字からもISAE2016に多くの研究者が参加したことが分かって頂けると思います。

しかし、ISAE2015とほぼ変わらない開催期間(ISAE2016では学術プログラムは712日夕方から15日まで、15日の夜は懇親会)だったので、時間帯によっては3会場同時並行で口頭発表が行われたり、口頭発表の半数くらいは質疑の時間を入れて持ち時間は5分!という非常に短いものとなっていました。また、plenary講演などは全員が聞くわけですが、一つの会場にすべての参加者が入るわけもなく、映像配信で2つの会場をつないで、plenary講演が実施されました。しかし、映像配信の機械の調子が悪く、中継先の会場で講演がよく聞こえなかったりして、途中でその会場から大勢が移動するなんて場面もありました。移動する際、ISAESecretaryである Jean-Loup Rault氏が‘日本は良かったなー’と言いながら日本人グループの横を走りさって行ったのが印象的でした。このように少し残念な部分はあったものの、全体的には面白く、刺激的な研究も多く発表されていたので、充実した内容でした。私個人としては大会4日目には自身の研究の口頭発表(5分プレゼン)を行いました。

ISAEの理事会については、7月12日に開催予定だったため、7月11日(月)朝に日本を出発しました。しかし、ロンドンの入国審査で2時間以上時間を消費し、しかも開催地であるエジンバラへの飛行機が遅れたため、ホテルについたのが、現地時間で11日の夜中(日本時間で12日の早朝、ほぼ24時間かけての移動)でした。ISAE理事会は次の日の朝9時から開始であり、少々しんどいスケジュールとなってしまったわけですが、エジンバラ空港のタクシー乗り場でISAEのSecretaryである Jean-Loup Rault氏(2回目の登場)に偶然遭遇してしまったがために、私がエジンバラに到着済みであることが明らかとなってしまったので、理事会には翌朝9時からしっかり出席しました(遭遇しなくてもちゃんと出席はするのですが)。

理事会では、学会運営に関わる諸問題について話し合われたほか、今後の学術集会について、ISAE2017は8/7-10にデンマークのオーフスで開催すること(要旨締め切りは2月1日)を確認し、また、2020年の学術集会をインドでどのように開催・運営するか検討されました。また、発展途上国における応用動物行動学の発展を支援するための新しい幹事ポストについても議論されました。

ISAE2016の学術プログラム以外の感想として、参加費が480英ポンド(会員早期割引価格)ととても高かったこと、一方、参加費に含まれていた昼食はバイキング形式でほぼ日替わりでいろんな料理が出てきて満足な食事がとれたことが印象に残りました。また、エジンバラはとても過ごしやすく、滞在中は非常に快適な生活を送ることができました。

ISAE2016終了後はサイレンセスターという都市に移動し、以前からウマの行動発現メカニズムに関する共同研究を話し合っていたRoyal Agricultural University (RAU、王立農業大学)のHemmings博士を訪問しました。RAUでは、もうひとりの共同研究者であるMcBride博士(ISAE2005に参加していたらしい)も加わり研究打ち合わせを行ったほか、ISAE2016で口頭発表した研究内容について紹介し、また、RAUの馬飼育施設および近隣の乗馬クラブ(共同研究の実施場所)を見学させてもらい、実験の様子も見せて頂きました。RAUでの滞在後、19日にロンドンから飛行機で日本に帰りました。

最後に、ISAE2016開催期間中、フランスのニースでテロが、トルコでクーデターが起きるなど、国際学会への参加のリスクを実感しました。ISAE2016の参加者のうち一人はトルコ経由だったため、空港でクーデーターの騒動に巻き込まれたらしいですが、その方含め日本人参加者全員、日本に無事、帰れたことが、何よりも良いニュースだったかもしれません。

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◇ISAE2016 参加報告
 

中山ふうこ(岐阜大学大学院応用生物科学研究科修士課程2年)

2016年7月12日~16日まで、スコットランドのエジンバラで第50回国際応用動物行動学会が開催されました。前々から参加したいと思っていたのでアブストラクトがなんとか通り、参加が決まった時はとても嬉しかったです。期待ともに出発しました。エジンバラへは日本から韓国、オランダを中継して向かう予定でした。しかし、韓国の空港に着くと、搭乗予定の便が当日の22時発から翌朝の出発に変更となっていました。結局、オランダからエジンバラへのフライトに間に合わないチケットを持ったまま、一人空港のソファーで不安な夜を過ごすというハプニングもありましたが、なんとかエジンバラに辿り着くことができました。エジンバラは石造りの建物と石畳が広がり、歩いていると中世にタイムスリップしたような気分になる素敵な街でした。学会会場はエジンバラの中心部から徒歩30分ほど、緑豊かな公園のふもとにあり、構内でも野生のウサギやリスがみられました。

研究発表は3日間ありました。口頭発表では正のウェルフェア指標や動物の表情に関する研究が多く、逆に生理学的な指標を用いたものは日本での学会に比べて少なく感じました。爬虫類や魚類を対象にした研究やイスラム教とアニマルウェルフェアの関係を調べた研究などバラエティーに富んでおり、新鮮でおもしろかったです。

ポスター発表は学会2日目の夕方にありました。会場ではワインとチーズが振る舞われ、「飲みすぎて喧嘩しないように」とアナウンスされるほどラフな雰囲気でした。私は繋ぎ飼いのウシにおける繋留時間の延長がウシの繋留時の行動や運動場解放時の運動的な行動の発現に与える影響について発表しました。そこでいただいた質問は繋ぎ飼いという飼い方自体に関するものが多かったです。日本では運動場が無いことから解放作業が行えず繋ぎっぱなしの場合もあることをヨーロッパの研究者の方に伝えると、ひどくショックを受けられていました。繋ぎ飼いにはメリットもあり一概に否定することはできませんが、アニマルウェルフェアが重視されているヨーロッパでは受け入れられにくい方法だということを改めて感じました。

最終夜のバンケットではスコットランド料理を楽しんだ後、いつの間にかダンスパーティーが始まっていました。軽快なスコットランド民謡と楽しそうに踊る人たちを見ていると、私も踊りたいという気持ちになり、気づいた時には輪に加わっていました。学会期間中、英語が聞き取れなかったり、自分の言いたいことがうまく伝えられなかったり、悔しい思いをたくさんしました。しかし、この時ばかりはダンスが言葉の壁を忘れさせてくれました。自身のダンスの出来はともかく楽しいひと時でした。

最後に、本学会は応用動物行動学会の参加助成を受けて参加させていただきました。貴重な経験をさせてくださった学会関係者の皆様に深く感謝いたします。学んだことを今後の研究や生活に活かしていきたいです。


羊の放牧_車窓から


学会会場前の風景


市街地

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◇AAAP2016参加報告
 

田辺 智樹(北海道大学 博士課程1年)

2016822日から25日かけて福岡県の九州産業大学において開催されたAAAP2016(The 17th Asian-Australasian Association of Animal Production Societies Animal Science Congress)に参加してきました。「環境と人類・家畜の福祉に寄与する持続的家畜生産の進展を目指して」というメインテーマのもと、口頭発表やポスター発表を中心に基調講演、ワークショップおよびシンポジウムと盛りだくさんの内容でした。大会期間中は、晴天が続き天気にも恵まれましたが、連日35℃越えの福岡の夏は北海道生活に慣れてしまった私にとって少々堪えました…。

ポスター発表が484題、口頭発表も409題と非常にたくさんの研究発表がありました。時間の都合上、自分が興味あるすべての発表を聞いて回ることはできませんでしたが、どの会場においても活発な議論が交わされていました。私は「The changes of grazing time, suckling behavior and pasture forage intake by Thoroughbred foals」というタイトルで放牧地における子馬の行動と栄養摂取について、ポスター発表をさせていただきました。私の研究は畜種も実験内容もマイナーなところがあり多少不安はありましたが、発表中はたくさんの方々からご質問やご意見をいただき、発表時間はあっという間に終わってしまいました。

今回のAAAP2016や昨年の国際応用動物行動学会(ISAE2015)といった国際学会に参加したことで、人の研究を理解するにも自分の研究を発信していくためにも英語力を身につけることがとても重要であると強く感じました。また、他国の同世代の学生が英語で口頭発表をしている姿にはとても刺激を受け、国際学会での口頭発表を今後の1つの目標として、研究だけでなく英語の勉強にも真剣に向き合っていこうと思いました。

最後に、国際学会での発表は学生にとって非常に良い経験になると思います。国内学会にくらべてハードルが高く感じ、敬遠してしまう気持ちもわかりますが、意外となんとかなるものです(私自身がそうだったように…)。さらに、学会では研究発表だけでなく懇親会や現地検討会などの楽しいイベントもたくさん用意されています。ISAEは毎年開催されており、次回は2017年8月にデンマークで開催されます。また、AAAPは2018年8月にマレーシアで開催されます。学生のみなさんぜひトライしてみてはいかがでしょうか?


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◇国際心理学会(ICP2016)に参加してきました!
 

山梨由美(京都大学)

2016年7月24日‐29日にパシフィコ横浜でおこなわれた国際心理学会(ICP2016)に参加してきました。8000人もの参加者が集まり、発達心理学・臨床心理学・比較認知科学・神経科学・社会心理学などたいへん幅広い分野の研究発表がされる大きな学会でした。

わたしはその中で二宮茂さん(岐阜大)主催の応用動物行動学会のテーマセッション「Animal welfare: A scientific assessment of animal stress and comfort」での発表と、シンポジウム「Comparative cognition and animal welfare science」のオーガナイズ&発表をおこなってきました。
応用動物行動学会のセッションでは学会関係者3名による発表でした。最初に二宮さんが動物福祉やその研究の歴史を、Brambell reportからその後のpreference testや常同行動、寝るときの姿勢などの福祉評価法について具体的な事例を元に紹介しました。その後わたしがここ10年で大きく進展した体毛中コルチゾルによるストレス評価について、これまでチンパンジーを対象におこなった研究とその周辺の研究をもとにレビューしました。最後のトリは新村毅さん(基生研)で、ニワトリの福祉の客観的評価をもとにしたケージシステムの開発に関する研究の紹介でした。
わたしが企画したシンポジウムでは、霊長類の認知と福祉のまじりあった分野で研究をしている話者4名が集まり、それぞれの基礎的・応用的な研究について話しました。近年福祉評価のうえで、認知科学で使われたいた手法を動物の情動評価に使おうという動きが増えています。イギリスのJohn Moores Universityから招いたEmily Bethellさんは、その中でも注目を浴びている認知バイアスについて、自身がおこなったマカクザルを対象とした研究をいくつか紹介しました。Duncan Wilsonさん(霊長研)は、オマキザルを対象に、提示される刺激の情動価に対する使用する目の左右性について、脳の情動処理の左右差から導き出される仮説と一致するかどうかに関する実験結果の発表をしました。さらに動物福祉向上の試みとして、櫻庭陽子さん(霊長研)は脊髄炎により体の一部が動かなくなったチンパンジーのリハビリに認知タスクを応用した例について、わたしも京都市動物園でチンパンジーを対象におこなった、認知エンリッチメントについて紹介しました。これら盛りだくさんの内容を、最後に小倉匡俊さん(北里大)に講評しまとめてもらいました。
両方のセッションとも入れ代わり立ち代わり15から30名ほどの人が集まってくださり、一安心…。終了後会場に来ていた聴衆と話をしましたが、動物の研究者だけでなく人の発達などの研究をしている方も来ていたようでした。

さてAnimal welfareに関するセッションは上記2つだけでしたが、国際心理学会だけに人間のWell-being研究はたくさんありました。Eudaimonic Well-being(自身の望みややりがいなどに関連した幸福)などに関する、国をまたいだ大規模なアンケート調査や文化や生物学的な基盤などに関する研究が興味深かったです。たとえばWisconsin Madison大学のRyff氏の発表によると、人ではEudaimonic Well-beingのレベルには一貫した傾向がみられ、継続的に高い人は9-10年後の健康状態がよいなどの結果がみられるということです。人間のWell-being研究はアンケート調査法が基本であり、なかなかに動物には応用しづらいところも多くありますが、今後コンセプトや研究結果などもう少し比較検討することは、Well-beingについての考えを深めるのに有効かもしれないな…と感じました。はじめて参加する大人数の学会に最初はとまどいを覚えたものの、普段は触れることの少ない人間の心理に関する最前線の研究にふれることができ、時にはあえて新しい学会を覗くのも楽しいものだとも思ったりしました。

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◇第7回ISO/TC34/WG16(AW)会合参加報告
 

竹田謙一(信州大学)

915日~16日にフランス・パリで開催された第7ISO/TC34/WG16(AW)会合に、WG登録エキスパートとして出席しました。記号のような会議名称で、皆さんにはイメージがわかないかと思います。この会議は、ISO規格の具体案を検討する専門委員会(TC34という食品専門委員会)の下に設けられた作業部会(WG16)において、フードサプライチェーンの組織に対してアニマルウェルフェア(AW)マネジメントに関する一般要求事項とガイダンスを策定し、これを技術仕様書としての発行を目指すものです。

既に、OIE(世界動物保健機関)では陸生動物衛生規約(TAHC)の第7章として、AWの定義、一般原則、陸海空輸送、野良犬の管理、肉用牛、乳用牛、ブロイラーの飼育システム等に関する国際規約が示されています(ちなみに、ブタについては来年2月に、採卵鶏については本年11月に専門家会合が開かれます)。OIEでは、せっかく策定した国際規約を世界に浸透させたい、普及させたいという狙いがあり(なんせ、TAHCには罰則規定がないものですから・・・)、AWに関する国際会議や協同事業等を積極的に行っています。

人やモノの移動、流通がグローバル化している今日、新興感染症の蔓延防止や食品の安全性確保は重要な問題です。しかし、国際的な人やモノの流れを妨げることは出来ないので、公正で、健全な国際貿易を担保する国際ルールが必要です。これをWTO/SPS協定と呼んでいます(WTOとは、貿易に関連する様々な国際ルールを決める国際機関。SPS協定とは、衛生植物検疫措置の適用に関する協定で、WTO協定の附属書の一部であり、植物だけでなく、動物の健康、検疫や食品の規格や生産方法、リスク評価方法も対象)。WTOには、動物の衛生等に詳しい専門家がいないので、国際基準策定機関としてOIEが、この部分を担当しています(WTOとOIEは1998年に合意文書を交わしています)。つまり、動物や動物性製品(畜産物)の国際的な移動、取引に関して、OIEのTAHC順守が求められます。そんな中、OIEとISOがそれぞれの関心がある分野(例えば、国際標準やAW、畜産物の国際取引など)での協力、協働を推進しようとする合意が2011年に交されました。(確証はないのですが・・・)前述のSPS協定において、AWは含まれていないため、それを補うべく「TAHCに則ったISOのツール」開発が進められました。2012年にISOのAWの技術仕様書の発行を目指す作業部会がTC34に設けられました。技術仕様書とは、ISO規格にするためには未だ課題があるものの、将来的にはISO規格として合意される可能性があり、ISO規格となる1段階手前にある文書です。

さて、本技術仕様書の中身についてですが、食用目的で飼育、繁殖される陸生動物(哺乳類と鳥類)のAWに関する一般要求事項とガイダンスなので、要は家畜と家禽が対象となります。全体の中で、何らかの数値目標、数値的規格が要求されているわけではなく、あくまでも、AWに準拠した飼育システムを採用し、取り組んでいるかを問う内容となっており、AWの中身についてはすべてOIEのTAHCに準拠するような記述になっています。

特徴的なのは、AWの実行計画を立て、GAP分析を行い、フィードバック管理できるシステムが運用されているかを組織体自らが取り組まなければならない点です。最初の段階として、現在の飼育システムにおいてAW評価をします。次いで、AW飼育の計画案を策定、それを実行し、AW飼育計画を評価、再検討を行うという、いわゆるPDCAサイクルでAW飼育を実施していくことが求められています。

この技術仕様書は12月6日~8日の日程で開催される第4回OIE AW国際会議の前までに発行される見込みで、私が出席した会議は第7回目で、かつ最終回のWG会議でした。これまでに日本からは専門家はもとより、農林水産省を含め畜産関係者が1度も参加しなかったことは、とても残念でした。なぜならば、日本でも海外の基準とも見劣りしない(?)AW畜産の指針が作成され、研究も多くされているのですが、そのような認識を会議参加者は持っていませんでした。「へぇ~、日本でもやっているんだ・・・」という感覚です。そういう点では、最終回での会議ではありましたが、そこに日本人が座って、なにやら難しい顔をしていたことは意味があったと自負しています。また、途中のCoffee breakやLunchでマレーシア、スイス、カナダ、アルゼンチン、イギリスの様子が聞けたことは有意義でした。ただ、会議では1ページの原案を検討するのに、用語の定義を見直したり、「necessary」という単語を入れる、入れないなどと言った議論で1時間も要したりと、既に夕方には疲労困憊・・・。

日本が唯一、原案に対して出したコメントは、「(AW評価の)しきい値は許容範囲にある絶対値、もしくは準拠グループから得られる他のパラメーターを含むことができる」という文言に対して、「準拠グループの定義があいまいなので、文言を削除すべき」というものでした。デンマークも「準拠グループの定義を明確に」というコメントを出しました。これらのコメントに対する議論は翌日に持ち越されました。残念ながら、私自身、学会用務のため翌日にはパリを離れなければならず、WG座長のDr. Grayに、用語の定義を明確にしてほしいし、これらのパラメーターを提示するグループは、科学的な視点がなければならない旨、口頭で伝えました。Dr. Grayからは、「主張は理解できるが、いろいろなグループがあり、定義は難しい」という内容でした。後日、送付された技術仕様書(最終案)を確認すると、準拠グループという文言は削除され、「しきい値は絶対値、もしくは許容範囲にある値を含むことができる」となりました。もちろん、ここで言う「値」が意味不明と思われる方もいらっしゃると思いますが、後述に「動物ベースのAW評価におけるしきい値を決定するときは、審査制度のある科学論文に裏付けされたもの」と明言されています。

WTO/TBT協定では、規格を作成、改正する時には原則としてISOなどの国際規格を基礎として用いることを各国に義務づけています。現在のJAS規格には、AWの内容は全くありません(有機JASの規格にすらない。快適性という言葉さえも)。現在、政府は「農林水産業の輸出力強化戦略」を策定し、畜産物の輸出強化を進めています。本技術仕様書が発行後、日本の畜産物を海外の規格・基準に合致させるためには、それに合致した飼養方法、JAS規格の改正等が求められます。そして、客観的データに基づいたAW評価が家畜生産現場にも求められることでしょう。しかし、誰が家畜のAW評価をするのでしょうか? 農業改良普及員や農協の営農指導員に、このようなスキルはありません。また関連学会等を含め、家畜のAWを評価できる人を認定する制度が存在しません。今後、「家畜福祉認定士」といった資格を検討する必要があるのではと感じました。今こそ、応用動物行動学会が中心となって、我が国における家畜福祉評価ならびに、その評価も基づく畜産物の安定的供給と輸出を考える時ではないでしょうか?

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◇合同大会にむけて(日本動物行動学会)  




岡ノ谷一夫(東京大学)

若い人は知らないと思いますが、現在Ethology(動物行動学)という名で発行されている雑誌は、1985年まではZeitschrift fuer Tierpsychology(動物心理学雑誌)という名前だったのです。有名なTinbergenの4つの質問の論文が載ったのもこの雑誌です。なのに今の日本では、動物心理学と動物行動学は全く別の学会になってしまった。両方参加しているのはほんの数人です。それに加えて、応用動物行動学会も、家畜管理学会も、行動内分泌研究会もある。ただでさえ行動学なんて「役に立たない」学問は今や日陰者なのに、こんなにたくさん学会があったらお互いに足ひっぱり合うことになっちゃいます。それに学会って土日にやるから、家族に申し訳ないし。でもこれらすべて、動物が好きな人たちが運営しているんです。みなさんはきっと、動物好きで、動物のことが知りたくて、カマキリの卵を家で孵化させて親に怒られたり、野山で鳥をみたり、ザリガニを飼って脱皮した皮を集めたり、縁日で買ってきたひよこを育てたり、金魚すくいの金魚のお墓を作ったり、動物園に行くのが何よりも楽しかった子供達だったんでしょう。だったら一緒にやろうよ。僕は正直、行動学に関連する学会はひとつになればいいのに、と思っています。ティンバーゲンの4つの質問は、ひとりの人間が4つともやるのがいいんだよ。

僕は文系だったけど、なんとかして動物行動学の勉強がしたいと思い、慶應義塾大学の心理学専攻に入りました。1979年のことです。その後、慶應の大学院に落ちてしまったので、アメリカのメリーランド大学の心理学研究科に入りました。1983年のことです。昔話でごめんよ。でも、メリーランド大学が素晴らしかったのは、心理学と動物学が同じ建物にあったことです。由来を聞くと、どちらも動物実験をするので、排水や換気の便を計って同じ建物に入れてしまったそうです。安易だよな。当時は行動主義心理学と動物行動学が対立していた時期です。でも、同じ建物にいるという理由だけで、お互いの交流がありました。対立も含めた交流です。無視ではありません。廊下を歩いていると、動物学の面白そうなセミナーをやっているのが見えて、ついもぐり込んだりしました。今はやりのプレーリーハタネズミのオキシトシン研究の黎明期で、ハタネズミの行動比較をやっていたSue Carter先生にお願いして行動内分泌のゼミをやってもらったこともあります。学習の原理は1つだと信じて動物実験をしていた心理学研究科と、行動の多様性を大切にしていた動物学研究科がお互いに批判し合いながらも同じ場所にいたっていうのは、今考えると理想郷でした。

来年はティンバーゲン生誕110周年です。この機会に、行動学がひとつだった時代を振り返って、もう一度学ぶことがないか、考えてみましょうよ。みんなが何か学べたという感触を得ることのできる合同学会にしましょう。それがうまく行ったなら、5年に一度は合同学会をやることにしましょう。みんなそれぞれ好みはあるだろうけど、元を正せば動物好きの少年少女だったわけですから、必ずやわかり合えると思うんだよね。参加者みんながやってよかった、と思える学会にするため努力します。ご協力をお願いします。



※編集担当から

日本動物行動学会では、2016年度動物行動学会大会第35回大会を11月11日(金)から13日(日)の日程で新潟大学五十嵐キャンパスにて開催される予定です。詳細は大会サイトをご覧ください。

http://ethology35.wixsite.com/niigata


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◇合同大会に向けて(日本行動神経内分泌研究会)
 

小川園子(日本行動神経内分泌研究会代表・筑波大学)

本研究会は、既存の学問領域にとらわれず、「ホルモンが脳に作用することにより行動がどのように制御されるのか?」というテーマに関心のある研究者が集結し、研究者の相互交流と次世代研究者の育成を図ることを主軸として活動しています。2006年7月に第1回研究会を、また同10月に第33回日本神経内分泌学会学術集会サテライトシンポジウムとして「社会行動を制御するホルモンのダイナミズム」と題したキックオフシンポジウムを開催して以来、今日まで、年2〜3回の集会を行っています。また、日本神経科学会、日本生理学会、日本解剖学会、日本動物心理学会、日本心理学会、日本動物学会等の多岐にわたる学会でのシンポジウムやワークショップ、日米(2011年 Emory University)、日中(2008年筑波大学、2011年 Shaanxi Normal University)共同セミナーを開催して、会員の研究成果の国内・外への発信にも積極的に取組んでいます。初年度より夏に開催している合宿形式の大会(2泊3日)では、大学院生、学部生を中心とした口頭発表と教育講演をメインプログラムとし、シニア、若手が一体となった自由な雰囲気を保ちつつ、毎回、熱のこもった真剣な議論を展開しています。

「ホルモン・脳・行動」のいずれかひとつにでも関わる研究を進めておられる研究者、学生の皆さんのご入会を心よりお待ちしております。入会をご希望の方は、日本行動神経内分泌研究会総務担当(jsbn@kansei.tsukuba.ac.jp)へメールにてお問い合わせください。

 まだ歴史の浅い、若い研究会ですが、2015年には日本神経内分泌学会との合同学術集会を成功させました。その時の経験をもとに、2017年の行動学関連学会合同大会でも先輩諸学会の会員の皆様との交流を通して、さらなる研究会の発展を目指したいと思っております。また、合同大会には本研究会から多くの大学院、学部の学生が参加予定です。ぜひとも、皆様から有益なご指導、ご助言いただければ幸いです。


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◇2017年度春季研究発表会の開催予告
 

新宮裕子(大会担当・道総研根釧農試)


以下の日程で応用動物行動学会・日本家畜管理学会合同の2017年度春季研究発表会とシンポジウムを開催します。詳細は次号に掲載しますが、26日に懇親会も予定しています。ふるってご参加ください。

日程:2017年3月26日(シンポジウム)、27日(研究発表会)
場所:神戸大学(神戸市灘区鶴甲1丁目2-1)

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◇「動物福祉研究会」(JSAWS:Japanese Society for Animal Welfare Science)を設立しました
 

佐藤衆介(発起人代表・帝京科学大学)


去る2016年9月29日(木)13:00-18:00に、TKP品川カンファレンスセンターにて、 動物福祉研究会の第1回シンポジウムを開催した。講演者並びに演題は、以下の通りであった。下記に示す発起人からの宣伝もあり、64名もの参加を頂き、盛会裏に終わった。本研究会は、新村毅(基礎生物学研究所・特任助教、11月より東京農工大学准教授)、谷 恭平(民間人、東京大学農学部獣医学課程卒業)、佐藤衆介(帝京科学大学・教授、東北大学・名誉教授)が幹事となり、下記に示した方々が発起人となり設立したものである。とりあえずFacebookも立ち上げ、徐々に形を整えていく所存である。
https://www.facebook.com/animal.welfare.science/?ref=page_internal

1.佐藤衆介(帝京科学大)「動物福祉議論の高まりと科学者の役割」
2.中尾央(山口大)「動物(福祉)に対する哲学的アプローチ」
3.山口拓美(神奈川大)「『資本論』と家畜福祉」
4.打越綾子(成城大)「仕切られた動物観と畜産動物の福祉」
5.七田麻美子・塚原直樹(総研大)「動物倫理に関する授業の試み」
6.新村毅(基生研)「生命科学分野における動物福祉研究の進展と提案」

 佐藤は以下に書くような動物福祉議論の高まりを紹介するとともに、それらに科学はどう対応をすべきかを、中尾は動物への苦痛が配慮の対象となっているが、肉体的一時感覚である痛への配慮は妥当としても、二次感覚を必要とする苦経験の証明は困難であること、山口は歴史的に見て、人間の福祉改善法制化の前に動物の福祉改善法制化があり、動物福祉改善の重要性を指摘した。打越は産業動物利用に関して、様々な要因、生産・屠畜・処理・流通・輸入・需要が複雑に絡み合う現状を紹介し、包括した理解の中で福祉問題を扱うことの重要性を、七田・塚原は都会の進学校と地域の普通校で高校生への動物倫理学教育の試みとそれへの反応を、新村は動物福祉学へ先端技術である遺伝子工学やICT利用の重要性を報告した。盛りだくさんの話題提供であり、個々について深く議論することは出来なかったが、様々な側面から動物福祉を考える必要の重要性を認識できたと考える。

近年、日本の動物福祉状況に関して、外国から様々な問題提起がなされている。一昨年には、牛肉を欧州連合(EU)に輸出しようとした際に、日本の屠場でのウシの扱いをEUの動物福祉規則に合致させるように改善が求められた。昨年には、水族館で飼育するイルカの入手先である「野生イルカの追い込み漁」が福祉的でないということで、日本動物園水族館協会は世界動物園水族館協会から会員資格が一時停止された。本年には、2020年の東京五輪における食材調達において、安全に加えて持続可能性に配慮すること(エシカル消費)が議論され、その要素の一つとして産業動物の福祉も検討課題に上がっている。このような状況において、「我々はどう対応すべきか」に関して研究者も責任の一端を担っている。シンポジウムでも明らかになったように、動物福祉問題は、人文社会科学上の形而上的課題であると同時に、どう扱うべきかを具体的に示す自然科学上、どう実行に移すかの行政学上、ならびにどう教育するかの教育学上の形而下的課題も含まれる。まさに複合学問領域であり、一堂に会した議論が必要であると多くの研究者が感じ取ったところである。

この現代的課題に、多くの学生が関心を示している。各利用目的(産業、展示、実験、愛玩、駆除)・各専門分野での深化を目指す学生にとって、動物福祉問題は複合領域ゆえに、多側面からの議論の背景が必要である。現在そのような場は無いが、最近、場に対する渇望の声をよく耳にする。今回のシンポジストのように、多方面の研究者が動物福祉に関わっており、そのような研究者を一堂に会することで、そのような場を設定することは、日本の動物福祉の深化にとっても、若い研究者や学生の教育にとっても極めて重要である。

以上が動物福祉研究会設立の趣旨である。動物福祉研究会は、国内的議論を活発化するとともに、国際的議論にも積極的に関わる必要がある。動物福祉の国際的深化には国際獣疫事務局(OIE)が関わっており、OIEとの連携も図る必要がある。本会は、OIEでの動物福祉規約作成や活動に大きく関与するボランティア動物福祉団体である動物福祉国際連合(ICFAW:International Coalition for Animal Welfare)にオブザーバー参加しており、今後、それとの議論も企画することとなる。今後、発起人と世話人による議論の中で本会の事業の詳細を確定することとなるが、皆様のご支援を期待するところである。

発起人(敬称略)
佐藤 衆介(代表:帝京科学大学)、新村 毅(幹事長:基礎生物学研究所)、谷 恭平(幹事:民間)、植木 美希(日本獣医生命科学大学)、中尾 央(山口大学)、塚原 直樹(総合研究大学院大学)、七田 麻美子(総合研究大学院大学)、春藤 献一(総合研究大学院大学)、瀬尾 哲也(帯広畜産大学)、竹田 謙一(信州大学)、矢用 健一(農研機構畜産研究部門)、小針 大助(茨城大学)、深澤 充(農研機構東北農業研究センター)、二宮 茂(岐阜大学)、伊藤 秀一(東海大学)、河合 正人(北海道大学)、森田 茂(酪農学園大学)、山﨑 佐季子(ペット研究会「互」)、山口 拓美(神奈川大学)、高瀬公三(鹿児島大学)、岩本博幸(東京農業大学)、小原愛((株)イシイ)、山﨑 淳(北里大学)、細川幸一(日本女子大学)、加隈良枝(帝京科学大学)、笠井憲雪(東北大学)、山梨 裕美(京都大学)、小倉 匡俊(北里大学)


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◇編集後記   

深澤 充(東北農業研究センター)
 
台風があったり、10月に入ってから30℃越えの日があったり、阿蘇山が爆発したりと、自然に翻弄される日々が続きます。身の安全だけはくれぐれも守って下さい。命あっての物の種。

次号は3月に開催される春季大会・シンポジウムの告知などをお送りします。






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