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NEWSLETTER of The Japanese Society for Applied Animal Behaviour, No.30, Oct 2012

 
◇巻頭所感

植竹勝治(副会長・麻布大学)






 巻頭言というと、個人的には高尚なイメージがあるので、今回はあえて所感とさせて頂きます。


 周知の通り、日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化以降、日中関係は一気に冷え込み、竹島問題で、日韓関係もギクシャクしています。中国では、現地の日本人が罵声を浴びさせられるだけでなく、熱いラーメンを顔にかけられたり、ペットボトルを投げつけられたりと、一部で暴力的な被害が報道されています。麻布大学では北京農学院と国際交流協定を結んでおり、この夏も8月下旬から9月上旬まで、学生を海外研修に派遣していました。専門家の話では、中国国内における経済格差や深刻化する若者の就職難が背景にあり、国政への不満に対する、いわゆるガス抜きとの話で、暴徒化しているのはごく一部の民衆とのこと。良識ある中国人がほとんどだとは思いますが、それがボヤ騒ぎでは済まずに大火事にならないとも限りません。折しも、中国共産党は指導部の交代の時期です。歴史をふり返ると、文化の破壊と経済の長期停滞をもたらした文化大革命も、一言で言えば、中国共産党指導部内の大規模な権力闘争でした。今回もそれに似たような新旧両派による権力闘争の構図が垣間見られるだけに、反日の仮面を被った中国国内の争乱が、政治から経済へ、そして文化交流へと飛び火しない事を切に願っています。本学の引率教員からの話では、さすがに北京農学院校内は、少なくとも9月上旬までは、外の喧噪をよそに、いたって平穏だったようですが、科学・文化交流の機会である2015年のISAE日本開催に向けて、東アジア地域の政治的な安定が望まれます。


 その他にも、欧州の通貨危機、昨年の東日本大震災からの復興の遅れ等々、2015年に向けた国内外における政治経済的な不安定要因は、枚挙にいとまがありません。ですが、本学会会員の皆さんは、これらの逆境をものともせず、この夏も、国内外の学会やシンポジウムにおいて、精力的に活動を展開しておられます。今回のニュースレターで紹介される各種の活動報告は、このような暗くなりがちな世の中にあって、足下を照らす、一筋の明かりに他なりません。本学会のような学術分野が世の中に安心して受け入れられるのは、ひとえに平和あればこそです。応用動物行動学分野のさらなる発展のため、一筋の明かりを束に結集し、やがては世の中の政治経済の不安を吹き飛ばす「文化の波動砲」にしようではありませんか。




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◇第46回 ISAE2012 ウイーン大会 報告

近藤誠司(北海道大学大学院農学研究院)



 ISAEの第46回大会がオーストリアの首都、ウイーンのUniversity of Veterinary Medicine で、7月31日〜8月4日に開催された。7月31日の予定はレジストレーションとウエルカムパーティだけであったので、当初私は31日の夜にウイーン着で旅程を組み、飛行機なども早い時期から早期割引で予約をすませていた。ところが2015年に日本の札幌で開催予定のISAE大会の大枠についての打ち合わせが7月に行われ、その中で会場は北大の学術交流会館を使用すること、会期は2015年9月14日〜18日とすることが一応決められ、実行委員会の組織案なども検討された。まだ謂わばたたき台の段階であるが、この中で北大を会場とすることなどがほぼ決定事項であると思われ、私ども北大関係者が中心になって動かざるを得ないことは十分推測された。


 一方、ウイーンでの第46回ISAE大会にはアジア地区前理事の植竹先生、現理事の二宮先生も出席できないことが明らかになり、応用動物行動学会会長の森田先生および植竹先生から、私に急遽カウンシル・ミーティングに出席していただきたい旨の要請があった。当初は、出発前日である7月30日まで学内の会議や講義、研究打ち合わせなどがっちりと予定が組まれており、31日に間に合わせるよう出発するのは不可能に見えたのでお断りした。ところが試しに頼んだ旅行エージェントが、30日の夜中に羽田を出て、31日の午前中にウイーン到着便の席を探し出して来て、それではと予約便をキャンセルし新たに取り直した。その結果、朝900からのカウンシル・ミーティングには間に合わなかったが、メンバーが学食で昼食をとっているところに滑り込むことが出来、午後からの会議に出席した。その結果、今回のISAE出席は応用動物行動学会が管理する基金の補助を受けた。


 カウンシル・ミーティングの議事は別紙どおりである。各項目の資料は、会議前にいつものようにメール添付で二宮先生のところに牛に食わせるほどの量が送られてきているものと推測している。


 私は午後一番に、会長のAnna Valros博士の許可を得て、10分ほど時間をいただき、2015年に日本で開催予定のISAE大会の概要をパワポとハンドアウトで説明した。前回の日本大会では国の補助を受けたが今回は特に予定してない旨の説明に、「やはり日本も経済状態は良いとはいえないのか?」という質問があり、(あれをもらうとやたら面倒なことになる)とはいえず、「まあ、依然として不況のさ中にある」と答え、理事各位も納得していた。3年も前にがっちり組織作りに取りかかる日本特有の準備の良さがメンバーに感心された。


 議事の中では、Membership Secretary’s Reportで、Slow decline in membershipが報告されたことが印象深かった。「ISAEよ、おまえもか」と思う反面、Slow increase in membership in 応用動物行動学会を想い、つい心中でほくそ笑んだ。ISAE2015の概要の中で、直前に酪農大学で開催される日本畜産学会との連携や7月に札幌で開催されるInternational Wildlife Management Congress Vと連動して行きたい、という計画を説明していたことから、旧知のカウンシル・メンバーから「日本のように他学会との連携を強めて範囲を広げるべきではないか」という意見が出された。私も応用動物行動学会は有害野生動物関係と動物園動物の関係者を取り込むことでメンバーを増やしていると発言しようかな、と思っていたが、この意見が出たのでそれ以上のコメントはしなかった。なお、次回2013年度はブラジル開催、2014年度はスペインで開催予定であり、2015年の日本に続き、2016年のISAE学会50周年記念大会は英国Edinburghで行われる予定である。


 さて本学会では個人的に印象に残った発表がいくつかあったが、その中でひときわ強くトレンドを感じたテーマが4つあった。基調報告で行われたOIEからのWorld Organization of Animal Healthがその一つで、OIEの立場というよりEU全体のアニマルウエルフェアのEU基準の推進という非常に強い意向が感じられた。またこれに関してしきりに「Animal Welfare Science」というタームが(Mike Applebyを中心に)飛び交い、いったいいつそんな学問分野が成立しちゃったんだ!?と思うことしきりであった。同席した元応用動物行動学会会長の佐藤衆介博士によれば「ヨーロッパには家畜管理学という分野がなかったからだろうよ」とのこと。確かに各発表の内容は、アニマルウエルフェアを標榜することを除けば、我が国では従来から家畜管理学会・応用動物行動学会で盛んに発表・論議されていたことであり、EUではこういう話題のもって行き場がアニマルウエルフェア・サイエンスが出るまで無かったのかもしれない。
今ひとつはEpigenesisについての基調報告で、Peer Jensen博士の鶏と、Bas Rodenburg博士の豚についてのものを始め、いくつかあった。行動が環境+遺伝+個体差で、という式に加えて、環境×遺伝のInteractionの部分が強く影響する、すなわち“祖父が受けた環境の影響が孫に発現する“ことがこの分野の研究の表舞台に出たことは興味深い。そのほか、Play Behaviourの重要性、魚のウエルフェアなども強く印象に残った。


 この10年ほどのISAEの各発表をのぞき見て感じることは、基調報告を除いて、ISAE大会は概ね大学院生の発表の場になっていることだ。佐藤先生が上記でいみじくも断じたように、欧州ではこの分野の発表の場が少なく、ISAEが若手にとっての大きな発表の場なのだろう。2015年に予定されているISAE札幌でも、アジア・日本の院生諸君はがんばって積極的に発表してほしい。


 8月2日の朝700から、ISAEの認定学術雑誌であるApplied Animal Behaviour Scince(以下AABS)の編集委員会が開催され編集委員でもある私も出席したのでこれの報告もしておこう。2012年の現時点のリジェクト率は65%あまり(2011年は55%)、掲載論文の国別分布では西ヨーロッパが58.8%と半分以上を占め、ついで米国・カナダが17.8%,アジアは2.8%であった。2011年度のインパクトファクターは1.918で、最も高いGenet. Sel. Evol.の2.885から数えて6番目であった。なおJ.Dairy Sci,は2番目(2.564)、J.Anim.Sci.は4番目(2.096)であった。応用動物行動学会の会員諸氏も張り切って投稿されたい。


 学会参加の申し込みが遅れたこともあって、エクスカーションで空きがあったのはNational Park見学コースだけだった。日本人でこのコースを申し込んだのは私とまたもや佐藤衆介先生だけであった。しかし、人気の無かったこのコースは大正解だった。


 馬に関心のある人間にとって、ウイーンといえばリピッツアー種の白馬が様々な妙技を演ずるスペイン乗馬学校は是が非でもみたいところであるが、エクスカーションに入っていたこのコースは早々に満杯となり打ち切られていた。実際にこのコースに参加したR大学のM教授夫妻の体験談では、厩舎のまで40分間説明を聞いてそれがコースのすべてであったそうな・・・。


 National Park見学コースではウイーンの東に向かい2時間ほどバスに揺られて到着する大きな湖の周辺の国立公園が目的地であった。実はここはハンガリーとの国境地帯で湖の一部は既にハンガリー領である。一帯は国立公園として保護されてはいるが、たとえば草原は牛や馬の放牧で維持されている。また放牧する牛はなんとハンガリー草原牛である(写真1)。なお、国立公園といえども私有地も入り組んでおり、広大なブドウ畑(写真2)などの他、シカ撃ち用の塔(英語でハイシートと呼ばれる)が各所に設けられ(写真3)、シカ撃ちが盛んに行われていることが伺われた。湖の野鳥観察なども経験した帰り道、1戸の養豚農家によった。ここはマンガリータ種を放牧で飼養している農家であった(写真4)。エクスカーションに参加した方々にはピッグ・パーソンが特に若い女性メンバーに多く、私と佐藤先生は豚と娘の観察に従事したのであった(写真5)。さらに、この農家の経営者からこの品種で作った肉製品を盛った皿(写真6)とワイン・ジュースなどが提供され、一同酒食を満喫して帰路についたのであった。



 2015年の札幌でのISAEでもエクスカーション・コースは工夫しなければならないな、と感じる反面、R大学のM教授が「少なくとも一つは外れのコースを造らねばならない!!」と強く主張していたことも忘れてはならないだろう。




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◇国際応用動物行動学会第46回大会参加報告

矢用 健一(会員担当・農業生物資源研究所)






 国際応用動物行動学会(ISAE)の第46回大会は本年7月31日から8月4日の日程で、オーストリア、ウィーンで開催されました。今回、日本からの参加者の平均年齢は非常に高く、現職も含めた会長職経験者4名(日本畜産学会含む)と若手の福澤先生、中堅?の私という構成でした。いじり甲斐のある学生がいなかったのは寂しい限りでした。


 ウィーンといえば「芸術の都」です。ウェルカムレセプションが開催されたウィーン市庁舎、パンダのいる動物園も有するシェーンブルン宮殿、町の中心にあるホーフブルク宮殿、エクスカーションで訪問した希少種?の家畜を飼育しているシュロス・ホーフ宮殿と、力を入れているところは(見飽きるほど)絢爛豪華でした。ですが、ゲルマン民族の都だからなのか、街並みはそれほどおしゃれではなく、機能性重視という印象を受けました。学会会場となったウィーン獣医大学も(ドイツに行ったことはないのですが)ドイツ的な機能重視の建築が多かったように思います。


 肝腎の学会の内容です。今回のメインテーマは”Quality of life in designed environments?”でした。なぜ最後にクエスチョンマークなのか?動物のQOLを高める手段として“飼育環境の適正化”だけではなく、“遺伝子・個体発生・エピジェネティックな環境”、“人との関係も含む社会的環境”、“管理上不可避な痛みの軽減”、“動物の環境認知の評価”など、動物を取り巻く広義の環境に目を向けるという観点だったのではないかと私は理解しました。演題数は236題(うちオーラルが106)。おおよそですが、イヌ、ネコ関係が約20題、動物園動物(捕獲野生動物の管理など)関係が約10題、ウサギが意外と多く約10題、それ以外はウシ、ブタ、ニワトリ、ウマで、例年ブタ、ニワトリに圧倒されているこの4種の中で、今年はウシの健闘が目立っていたように感じました(ひいき目も含めて)。今年初の試みとして、「1分間のポスター発表宣伝」がありました。これは、オーラルセッションと休憩時間の間に壇上で1分間、自分のポスターをパワーポイントで宣伝できるというものです。これによって休憩時間に行われるポスターセッションを活発化する目論見でしたが、私と私の隣のポスターのドイツから来た大学院生のところには宣伝直後に人は集まらず、しょうがないので二人で説明のし合いをしてしまいましたorz


 以下、私が興味を持ったことを少しお話しします。デイビッド・ウッドガッシュ記念講演(1時間)、3つの本公演(35分間)、5つの一般講演(15分間)では、生後初期の生育環境がエピジェネティックな(後成的な)変化をもたらし、成長後の行動形質に影響を与えるというトピックが取り上げられました。私自身もウシを使い、生後の飼養環境とオキシトシン機能という切り口から行動発達への影響を調査しています。個体発生や初期生育過程における遺伝子発現で、エピジェネティクス的な変異が形質発現へ及ぼす影響が小さくはないことについて、近年数多くの報告がなされています。特に、胎生期における母親へのストレッサー負荷、初生時におけるストレッサー負荷や母親のケアの少なさなど、ネガティブな環境が行動発達に及ぼす(悪?)影響についての研究が多いです。家畜でのエピジェネティクス研究はまだ始まったばかりですが、今回の報告の中には「(母親不在で育雛される)ニワトリで母親の代わりになるようなケアを与えてやると、恐怖性が抑えられ、ストレッサーへの適応力が強化される」といったポジティブな環境の付与による行動発達への好影響にも注目が集まるようになっており、今後の発展が期待される研究分野だと感じました。


 ポジティブといえばもう一つ、快情動研究の進捗状況も気になるところでした。いつかは快情動を客観的に評価する方法を考案したいと考えていた私にとって、2008年アイルランドでの第42回大会の本公演でスウェーデン農業科学大学のLinda Keeling教授が提唱された、「動物の快情動を研究するための理論的枠組み」は、非常に印象に残るものでした。本大会で快情動研究は、1つの本公演と、11題の一般講演からなる一つの大きなセッションにまで成長してきており、自分の研究の進捗の遅さに歯がみする思いで聴講しました。動物の環境認知能を推し量ることの困難さも相まって、快情動の評価はなかなか一筋縄ではいかないとの認識が多数を占める現状ではありますが、自分も含め、今後もこの分野の研究成果がますます増えてくることを期待しています。


 年に一度開催される本学会は、(若干外国人のパワーとおしゃべり好きには閉口しますが)非常にフレンドリーな空気の中で和やかに進められます。多少英語が話せなくても、相手が研究内容に興味を持ってくれれば、拙い英語や筆談にも忍耐強くつきあってくれます。学会のホームページを見ていただければ過去に開催された大会のアブストラクトのPDFを自由に閲覧することができますから、特に「発表してみたいな」と思っている学生さんは、そのPDFで自分の研究キーワードを検索してみて下さい。学会には論文になる前の最新情報を得るチャンス、留学のチャンスが転がっていますよ。応用動物行動学会には「国際応用動物行動学会議派遣等基金」があり、論文投稿等を条件に学会旅費の援助をしています(学会の講演要旨締め切りが例年2月頃、基金申請の締め切りが3月初旬頃です)。また、2015年には日本で第49回国際応用動物行動学会が開催される予定です。是非、発表する事を目標に日々の研究に励んで下さい。





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◇ISAZに参加して


小野寺温(帝京科学大学大学院 2年)


 2012 年 7月 11 日から7月 13 日まで、イギリスのケンブリッジにて人と動物の関係における国際学会(ISAZ2012 Cambridge、以下 ISAZ 学会)が開催されました。
 今回の目的は、ISAZにて「Reasons and preferences of new owners who adopted cats from Japanese animal shelters.」のポスター発表を行うことはもちろんのこと、イギリスでの動物看護師の現状や教育について学ぶこと、そして私の指導教員である加隈良枝先生がISAZのBoard memberであったことからMARsのThe WALTHAM Centreへ見学をして知見を広げてくることでした。そのため期間は7月4日から16日までの約2週間に渡ってイギリスへ行くことになりました。


 イギリスの気候は、日本の夏に比べるととても寒く、雨が降らない日はないくらいどこかの時間帯で雨が降っていました。イギリス人にとってもこの時期には珍しいくらい寒く、大雨も降っていりの異常気象だったようでたので、地方によっては洪水が起きている様子がテレビで報道されていました。今回は、初めての国際学会発表だった昨年度に比べ2度目ということもあり、以前より緊張はしていませんでした。しかし、今回は学会前に様々な場所を見学する予定で、移動が多いことがスケジュール上に組み込まれていたので、私の体力と気力がもつかという心配は少しありました。


 まず初日の夕方にロンドンに着き、次の日には早速ロンドン大学のVeterinary SchoolのAnimal Nursingを見学後、夕方にはブリストルへ移動と慣れない土地での弾丸スケジュールでした。6日は、ブリストル大学にて憧れのレイチェル・ケーシーさんやブリストル大学の学生さんにお会いし研究のこと等について話すことができた嬉しい1日でした。次の日にはブリストルのシェルターを見学し、その後8日の朝にピーターバラへ移動、夜にはウォルサム主催のディナーに招かれ、多くの研究者とお会いすることができました。そして、9日はThe WALTHAM Centreへ見学に行き、栄養学についての研究や動物の健康管理についての研究成果の発表を聞いたあと、動物を飼育している様々な施設を見学できました。特に興味深かったのは、研究所として犬や猫を飼育しているにも関わらず、普通の家庭と変わらないような人と動物との距離が感じられたことでした。日本でも資金や広い土地等があれば、このような動物福祉に配慮された施設が増えてくれるのだろうかと思いを巡らせながら見学しました。


 次の日はピーターバラを散策した後、ISAZの学会へ参加する方々と共にケンブリッジへバスで移動しました。7月11日、ケンブリッジ大学のMurray Edwards CollegeのBuckingham Houseでオープニングを迎えました。ポスターは、Long Roomと呼ばれる隣の建物の中で展示され、リフレッシュメントの時間になると多くの人が見に来ていました。初日の夕方にはポスターレセプションが行われるため、私も朝にはポスターを貼りだしに行きました。昨年度もISAEとISAZにてポスター発表を行っていたものの、やはり直前になると緊張してしまいました。今年はポスター発表にも多くの人が応募したため、応募された内容が審査され、発表できなかった人もいると聞いていたため、なおさらせっかく審査を通り発表できるのだから頑張らなければと焦る気持ちがありました。私は、日本にいる時に懸命にポスターを作成し、担当の先生にも何度も見ていただき練習もしてきたんだから!と前回の時には言葉の壁があり悔しい思いをしたことを思い出し、今回は少しでも悔いの残らないようにしようと意気込んでいました。ポスターレセプションの時には、多くの人が私のポスターを見に来てくれたので、私もそれに答えるように研究の成果を知ってもらえるよう積極的に話しかけました。前回の時よりも会話をすることができ、他の国での状況について教えてもらい、また今後の研究についてのアドバイスももらうことができました。この発表を通して、様々な人から「面白いね」や「前回の発表内容も興味深い。データがさらに集まっているならこれからの結果が楽しみだ」という言葉をもらえました。このとき私は、最近の行き詰っていた思いが嘘のように晴れ、研究の成果を示したいという強い思いが甦ってくるのを感じました。


 また、学会では多くの興味深い発表を聞くことができ、自身の研究のヒントになりそうな成果を示している発表とも出会いました。また、ウォルサムの研究員のサンドラ・マッキューン先生や加隈先生のエジンバラ大学時代の指導教員であるジョン・ブラッドショウ先生にもお会いし、研究を見てもらい、アドバイスして頂くこともできことも良い経験となりました。


 今回の旅は、様々な大学の取り組みや最先端の研究所の見学、そしてISAZでの学会発表と本当に充実した2週間でした。この良い経験を生かし、今までの研究をまとめ、成果を示していきたいと思います。



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◇日本哺乳類学会2012年度大会参加報告

堂山宗一郎(島根県西部農林振興センター県央事務所)





日本哺乳類学会の2012年度大会が9月20日から23日まで麻布大学で開催された。応用動物行動学会員にとって、哺乳類学会はあまり馴染みがないと思われるので(私も参加したのが今回で2回目)、哺乳類学会がどのような学会かを簡単に説明すると、主に日本に生息する野生哺乳類、それもネズミからクマまでと幅広い動物種を研究対象とし、生態学を中心に形態学や生理学、遺伝学など様々な研究分野が入り交じっている学会である。今回私は、自分の研究発表はなかったが、被害対策に使えそうなネタを仕入れたり、異分野の研究手法を勉強することを目的に参加した。


 私は現在、仕事でツキノワグマの被害現場で対応することが多くなっているため、ツキノワグマに関する発表には、いくつか興味が引かれるものがあった。例えば、クマが木に登り堅果などを摂食する際に出来る「クマ棚」を目安に、非常に大まかであるものの、クマの棲息密度を把握できるという発表からは、住民主動で集落周辺のクマ棚を見つけること(クマ棚は誰でも簡単に見つけられる)により、予防的な対策が自主的にとれるのではないかと感じた。


 また、口頭発表で非常に多くの聴衆を集めたのが、ツキノワグマにビデオカメラ付GPS首輪を装着し、野生個体の行動を観察した研究であった。実際に撮影できた時間は4日間で合計約6時間と長時間でないものの、野生個体の摂食や休息、警戒行動そして交尾のような繁殖行動が主観的に撮影(クマの首の下側にカメラがあり、顎の先を映すような感じ)された映像は、非常に面白いものであった。映っていたクマの行動は、私がこれまでよく見て来たイノシシと同様に、移動しつつ食べられそうなものを口に入れ摂食し、少し開けた場所では警戒し、メスを見つけたらアタックし(時にはフラれ。。。)というものであり、私自身何となくではあるがクマの行動を想像できるようになったことは、今後被害現場で対策を施す時に役立ちそうである。ただ、主観的な映像をみると客観的な映像も見たくなるものであり、個人的にはクマの目の使い方(警戒時にどこを見ているのか、歩いている時にどのように周囲を確認しているかなど)は気になる所であった。


 他の動物種の発表でも、仕事柄なのか被害対策に直結するような研究に目がいった。琉球大学の院生が、安い!軽い!効果高い!という難題をクリアするマングースの移動防止柵の開発を研究していたが、野外でいきなり設置するのではなく、まず飼育個体によりしっかりと防護効果の検証を行っていたという点で、これまでイノシシやサルで同様の流れで効果的な防護柵が開発されていることから考えると今後のマングース防止柵も良いものが出来るのではないかと期待できた。


 その他にも、応用動物行動学会や家畜管理学会ではお馴染みのヘイキューブと鉱塩を誘引エサとして利用し、シカを捕獲しようとする研究(結果は行動圏外から誘引することはできない)など興味を引かれる様々な発表があったが、これ以上書くと長くなるので割愛する。


 面白い発表がある中、疑問に感じる研究もあり、その1つが、行動学的手法を用いたものであった。これはどの学会や研究分野でもあることだと思うが、その研究者が主とする分野外の実験手法を用いる時は、どうしても穴ができやすい。今回も、いくつかの研究で、「ちょっとそれは別の要因が、」とか「行動学的手法としてはちょっと、」というツッコミを入れたくなるものがあった。哺乳類学会の発表でも行動学的手法を使ったものが少しずつ増えている中、今後この点に関しては、応用動物行動学会員のような行動学を主としている方も、哺乳類学会にもっと参加し、様々な議論がなされれば良い方向に進んで行くのではないかと思えた。


 最後になったが、応用動物行動学会と同様に、哺乳類学会も若手の会員が増えており、非常に活気のある発表会だと感じた。応用動物行動学会員の中にも野生動物や動物園動物を研究対象にしている若手も多いと思うので、哺乳類学会にも是非参加をし、異分野からまた新しい刺激を受けてみることをお勧めする(来年は岡山理科大で開催)。


 あっ、もちろん若手以外の中堅〜重鎮の方々も是非参加していただきたいと思います。




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◇共催シンポジウム「震災から学ぶ、震災後の酪農」

森田 茂(会長・酪農学園大学)


 応用動物行動学会の皆様、お元気でしょうか。日々の学術的研鑽に努力されていますでしょうか?来る2012年11月16日(金曜日)に、酪農学園大学が主催する第44回酪農公開講座「震災から学ぶ。震災後の酪農」が開催されます。応用動物行動学会は、このシンポジウムを共催しています。開催場所は、黒磯公民館いきいきふれあいセンター(那須塩原市桜町1-5)で、13:00-16:00の予定です。私の発表では、応用動物行動学会のプロジェクトとして進行している、警戒区域(現在は避難解除準備区域)内で飼養されている家畜への対応について参加者(多くは酪農家)とともに、考えたいと思います。「20km圏内の家畜を考えることは、全ての家畜の飼養を考えること」と同じなのです。共催シンポジウムでは、私も含め2人の発表があり、もうひとかたは、酪農学園大学獣医学群の遠藤大二教授です。題名は「積み重ねられた放射線データをゼロリスクに活かす」という発表です。格調高そうです。お時間のある方は、ちょっと覗いてみてください。
http://www.rakuno.ac.jp/2012/08/9991/


 翌日11月17日に東京にて、少しメンバーを加えて、同様の企画を行ないます。こちらは共催にはなっていませんが、下記を参考にしてください。「カラスシンポ」と、日程が、かぶっています。カラスシンポに行きたかった。
http://www.rakuno.ac.jp/2012/08/9995/










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◇カラスシンポジウム案内

竹田 努(宇都宮大学農学部)


 平成24年11月17日土曜日、文部科学省科学研究費補助金(代表 杉田 昭栄)主催、野生生物保護学会の共催で、宇都宮大学峰キャンパス(宇都宮市峰町350)大学会館にてカラスシンポジウムを開催いたします。多数のご参加をお待ちしております。


 本シンポジウムは「カラスのすべてを語ろう。」というコンセプトの下に、国内のカラス研究者はもとよりカラス対策を案じている企業、自治体などを含めて、カラスをあらゆる角度から「語る」ことを目的としています。この会を機会にカラスの「おもしろさ」「美しさ」「かしこさ」そして「ヒューマニティー」を垣間見ていただければ主催者としては幸福です。また一方で日々起こっているカラスに起因する被害や弊害、また目に見えない問題を紹介できればと考えております。今回、幸運にも基調講演では国内の先端を走る研究者にお集まりいただける運びとなり、企画側としても大変エキサイティングな集会になると確信しております。カラスの生態はもとより鳥類全般の生態を研究しておられます樋口先生、動物の「心」、カラスの「心」を解剖学的、心理学的に解明しようとされている伊澤先生、カラスがどのような病原体を運びうるのか、病原体の生態を追跡している金先生、そして主催者の代表であるカラスの行動や認知能力を形態学的に読み取る杉田と、各先生方のカラスに対する思い入れは並々ならぬものであり、またそれは非常に独創的でもあります。


 参加、発表は無料です。詳細はホームページをご覧ください(「カラスシンポジウム」のキーワードで検索もできます)。



問い合わせ等は、下記の竹田まで、お願い致します。
カラスあるいは鳥類に興味のある大勢の皆様の参加を心よりお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。


問い合わせ先:竹田 努
email : ixodes@cc.utsunomiya-u.ac.jp
電話およびFax 028-649-5438


代表 杉田 昭栄
世話人 竹田 努
カラスシンポジウム実行委員会

シンポジウムのタイムテーブル(PDF)







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◇2013年度春季研究発表会の開催予告

竹田謙一(大会担当・信州大学)




 詳細は次号でお伝えしますが、日本家畜管理学会との2013年度春季研究発表会を以下のように開催する予定です。皆さま、奮ってご参加ください。


日程:2013年3月29日
場所:安田女子大学(広島市安佐南区)





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◇編集後記 

深澤 充(東北農業研究センター)


 あっという間に秋らしくなりましたね。厳しかった残暑が嘘のようです。読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋・・・・。急な寒さに体調を崩さないようにして、秋を楽しんでください。もちろん次回の大会への準備をお忘れなく。


 次回は広島大会の予告を中心にお伝えします。お楽しみに。




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